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旅立ち 筆者:羽根田 ひとみ

3月28日、高校を卒業し、就職する息子の引越し日。
布団とテレビ、スーツ、自転車を積み込み、運転免許取りたての彼の助手席に乗る。
高速を使って2時間ちょっとの場所で、普段の仕事で行くような距離だが、少し遠く感じた。
そして自分が運転するより疲れた。

会社の寮は、必要なものはほとんどそろっていて(冷蔵庫、洗濯機など)、カーテンまで総務課担当の方が買ってきてくれた。
食事も格安で弁当まで用意して頂ける。
とても恵まれた環境に驚きつつ、安心した。
地元の銀行に口座をつくりに行き町の探索を兼ねて、生活雑貨を買いに行った。
私はどうしても引っ越し蕎麦を息子と食べたくて、昔行った食堂に行った。
ところが今は宴会場になっていた。
残念だったが、これから彼が暮らす所が確認できて安心した。

4月1日、出発の日。
残りの荷物を自分の車に詰め込み出発。
朝、「荷物入れたか?」と催促しようと思ったら、「昨日、全部やった」といつもと違う返事。
部屋は綺麗に片付けられていた。初めて淋しさを感じた。

「挨拶回りしてくっから、菓子代!」と、にっこり笑って手を出された。
お世話になった友達の家族などの家を回ったようだ。
この日親戚が実家に大集合、95歳になる伯母の誕生会や本社移動になる甥、そして我が息子の就職祝い、それぞれ近況報告と挨拶をした。
息子は出発のとき、私の甥っ子4人に胴上げされ、大勢の親戚に万歳三唱をされた。
流石にドン引きかと思ったら、泣いていた。

「元気で暮らせ。がんばってこい!」
初心者マークの車を見えなくなるまで手を振った。

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