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歩くルーブリック(「ぼうず通信」より)

ある先生がはるか彼方を指さし、
あそこを目指して走れと指示します。
生徒は一斉にその方向に走ろうとはしますが
いまひとつ方向や走り方が定まらず、
意欲的に走る生徒もいません。

そこで先生は考えます。
ゴールに目印(学習の目標やめあて)を立て、
走るコースにライン(授業規律)を引き、
そこからはみ出さないように目印を目指すように指示します。
さらに、どうすればうまく走れるか、走り方のポイント(学び方)を教え、
走った後を振り返る(学習の振り返り)ように指示します。

次に先生は考えます。
生徒にはどういう走る姿(学ぶ姿)が好ましいのか、
ABCの評価表(ルーブリック)を走る前に渡し、
走った後に自己評価をさせます。
これで生徒の走る方向や走り方は定まりますが、
それでも立ち止まったり、蛇行しながら走る生徒がいます。
そこで立ち止まったまま動けない生徒や
コースを無視して走る生徒を抜き出して特別コース(通級)を用意します。

さらに先生は考えます。
ただ一斉に走るだけでなく、
リレーや駅伝のように仲間の力を借りてみてはどうかと。
そこでグループをつくり、バトンを渡し、
仲間と一緒にゴールを目指す(グループワーク)ように指示します。
グループごとにバトンの渡し方、
走る順番を工夫させることで、
多くの生徒が自主的・主体的に走るようになります。
ただグループごとの取り組みに差があることが気になります。

そこで先生は考えます。
生徒の走力や特性を考慮し、
グループのメンバーの構成を工夫します。
さらに、仲間にアドバイスできなければ:C、
仲間の改善点を指摘できたら:B、
自分の工夫したことを仲間に教えられたら:Aなど、
グループワークの評価表(ルーブリック)を生徒に渡し、
グループ内で相互の取り組みを振り返る
(グループの自己評価、相互評価)よう指示します。

これが授業改善のストーリーです。
このストーリーにはALやUD、通級の発想が含まれています。
ちなみにこのストーリーが目指すものは、
早くゴールにたどり着くことではありません。
生徒が相互の知識や能力を補いながら、
仲間と共にゴールを目指すノウハウを身に付けることです。
協働の体験を積み上げながら、
自己肯定感と共にアウトプットの力を育むことです。
次期学習指導要領の根幹です。
このストーリーはちょっとした発想の転換から始まります。

すでにこのストーリーで授業を展開している先生が多数います。
その授業は生徒も先生も生き生きとしています。
それが授業の協働効果です。
今後、授業改善がさらに浸透することを願っています。
その大前提として、授業規律をこまめに注意することが不可欠です。
どんな姿勢で授業を受けたらよいのか、
あるべき学ぶ姿勢をその瞬間、瞬間にわかりやすく生徒に伝える。
すべての先生が「歩くルーブリック」になることを期待しています。

【原典】http://www.akiru-h.metro.tokyo.jp/site/zen/page_0000000_00043.html
(東京都立秋留台高等学校 校長 磯村元信)

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