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菜園も学園も“豊かな土”を 筆者:阿部 三千雄

菜園で野菜を作るとき、 一番大切なのは、良い土を作ることだ。

野菜を上手に作るには、必要な肥料を、必要な時期に必要量与えれば、結果が良く出ると思われがちだ。


しかし、野菜はN・P・K(窒素・リン・カリウム)の3要素だけではなく、もっとたくさんの要素を土の中から吸収して育ってゆく。

そのため、良い土を作るには、堆肥や落ち葉などの有機物を土の中に鋤きこみ、微生物の働きを活発にさせることで、通気性や水はけの良い土ができるのだ。

この地味な作業を怠ると、土に力がなくなり、野菜の成育がにぶったり、病気になったりして、よい結果は得られない。


さて、大学でも人間を育てるために、学園という“豊かな土”が大切になってくる。

建学の理念や学園の伝統・歴史といった目に見えない、いくつかの要素が、長い時間をかけて醸成され、学生たちの栄養となって吸収されてゆく。

いま、あちこちの大学で、高級マンションまがいの高層教室の建設が目を引く。大学はこうしたハード面の充実が、受験生や保護者へのアピールになることを期待しているのだろうが「百聞は一見に如かず」の効果は出ているのか。


入学した学生を、4年間でどれだけ質の高い人材に作り上げて世に送り出せるかは、各大学が研究を重ねるところだ。

高度な技術や知識も大切だが、学生たちが、落ち着いた環境の中で学業に専念できる“豊かな土”作りをめざすことこそ、いま、大学に求められる、大きな課題ではないだろうか。

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