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菜園から顧みる大学の半世紀 筆者:阿部 三千雄

狭い庭の家庭菜園で、毎年ナス、キュウリ、 小松菜などを作って楽しんでいる。

今年は、ミニトマトに挑戦してみた。 甘いトマトを作るのは難しいと聞いていたので自信はなかったのだが、 元気そうな苗を3本買ってきて植えてみた。


苗は順調に育ち、背丈がどんどん伸びてくる。毎朝よく観察してわき芽をすべて摘みとらないと、 まるで蔓草のようになり、実も育たなくなる。

3本とも同じように育っているようでも、よく観察してみるとそれぞれに個性があり、苦心はしたが、7月下旬から真っ赤に熟したミニトマトが200個以上収穫できた。

最近、天候に左右されないで必要量を毎日供給できる「植物工場」が各地で稼働している。人手のかかる路地栽培では、想像もできない完全な管理栽培なのだ。

ミニトマトのわき芽を摘みとりながら、ふと現在の大学の現状が頭をよぎった。


キャンパスに所狭しと建ち並ぶ巨大な校舎群。その中に数千、数万の学生が詰めこまれ4年経つと実社会に放り出される。

言葉は悪いがまるで「学生工場」そのものだ。

今春の大学進学率(過年度卒業者を含む)は、52.6%となり過去最高という。いま、大学に求められるのは、個性のある教育内容を学生たちに提供し、質の高い学生をどれだけ社会に送り出せるのかである。

そのことを自覚しなければ、大学は近い将来「植物工場」ならぬ「学生工場」に堕した、と批判されても反論できない日が来るかもしれないのだ。


60年前、角帽に憧れて大学生活を送った先人のタメ息は、いまの大学には届きそうにもないのだが…。

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