「高卒求人・高卒就職支援シリーズ(19)手書きそれとも、どうする履歴書」筆者・小林英明 更新日: 2025年4月25日
高校生のための進路ナビニュース
大学受験ではweb出願もかなり普及してきた。しかし就職に目を向けると、
企業の規模や設備、採用人数等の多様性もありIT化の中でも「紙応募」は今後も当分は続くだろう。
その中でも教員の調査書作成だけはIT化の恩恵を受けPC作成が主流であるが、
一方で生徒が作成する履歴書は現在でもほとんどが「手書き作成」のようだ。
そしてこの「履歴書手書き作成」は生徒にとってかなりの負担であり、
その指導は教員にとって苦労の多い仕事である。
ペン(ボールペン)書きで、もちろん修正テープの使用は許されない。
多くの高校生は長い時間と何枚もの履歴書用紙を消費し、神経をすり減らして履歴書を作成している。
履歴書をPC作成できれば生徒の負担はかなり軽減されるだろうし、
教員の指導も少しは楽になるかもしれない。
ところが教員には手書き履歴書を捨てきれない理由がある。
それは「手書き」の「アピール力」である。かく言う私も履歴書指導時に
「美しい文字は有利」、「下手でも丁寧に書いた文字で気持ちは伝わる」、「文字は人を表す」
などと生徒に言っていた。しかし「手書き文書」全盛の時代ならともかく、
「手書き」どころか「紙文書」そのものでさえ減少しつつある現代では、
「美文字」よりも「PC文書の作成能力」のほうが問われそうでもある。
それでは履歴書を受け取る採用側はどうだろう。
「書類の文字も見ています」という採用担当者は意外に多い。
聞けばこの場合の「見る」とは文字の「上手いか下手か」もあるが、
むしろ「丁寧に書こうとしているか」のほうを見るということであった。
着眼点に違いはあるが「文字を評価」という点に変わりはない。
だからこそ教員は「慌てず急がず一文字ずつ丁寧に」という指導をしてきたのだ。
こうなると履歴書作成は今後どの方向に進むだろうか。
高校生の負担軽減や社会のIT化を考えれば、履歴書のPC作成が拡大する可能性は高い。
しかし個性尊重、多様化の現代、一律PC作成にするわけにもいかないので当然「どちらも可」になるだろう。
「どちらも可」とはすなわち「どちらかを選ぶ」である。
そうなれば敢えて手書きでアピール効果を狙う生徒もいるだろうが、
高校生の多くはPC作成に傾きそうだ。しかしここで、
「一生懸命に書いた文字は……」と言って手書きを勧める教員が多ければ、
手書き履歴書の優位は継続して生徒の負担は相変わらず、となる。
就活高校生の限られた時間とエネルギーの使いどころは、
「履歴書の清書」以外に企業研究(見学)や自己分析等いくつもある。
今後教員には適切でより効果的な指導が求められるし求人企業の理解も大切ではないだろうか。
【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。