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「キャリア展望の地域差」筆者・法政大学キャリアデザイン学部 教授 児美川孝一郎

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今年も1月に成人の日を迎えた。
多くの自治体は、現在でも20歳を対象にして、成人の日に集いを実施している。
しかし、少なくとも2022年以降、この国の成人年齢は18歳である。
では、今どきの18歳は、どんな意識や価値観を持っているのだろうか。

自治体は、18歳にはあまり目を向けないのかもしれないが、
日本財団は、18歳選挙権の成立後の2018年から、「18歳意識調査」を継続的に実施している。
調査はすでに第67回を数え、2025年になってから発表された最新の調査は、
価値観・教育をテーマとして、その地域間比較を試みている。
具体的には、大学進学、育った街についての評価、
将来自分が育った街で暮らしたいかどうかといった点について、
中学卒業時の居住地に基づく都道府県別の分析と、
三大都市圏中心部/三大都市圏周辺部/地方圏中心部/地方圏周辺部
という4つの都市タイプ別の分析を行っている。

注目されるのは、
(1)大学進学率は、三大都市圏が地方圏よりも有意に高い、
(2)将来、自分が育った街で暮らしたいと考える者が多いのは、
 男女ともに、三大都市圏中心部(男性では43.4%)、
 三大都市圏周辺部、地方圏中心部、地方圏周辺部(26.7%)の順となる、
(3)キャリアモデルについて聞くと、地方圏の女性のみが「保護者」を挙げる者が最も多く、
 他は「参考になる人はいない」となる、
(4)自分が育った街について「将来の選択肢が多い」とする回答は、
 三大都市圏中心部(80.1%)、三大都市圏周辺部、地方圏中心部、地方圏周辺部(37.7%)
 の順となり、かなりの開きがある、
といった結果である。

高校にしても大学にしても、進路指導やキャリア教育に携わる教員や支援者は、
こうした若者たちのキャリア展望の地域差について、どう考えるのだろうか。
肌感覚としては地域差を認識しているという者が、多数派なのだろう。
しかし、そのことをどう踏まえて、キャリア支援の方法やあり方を組み立てているのか。
これまでの進路指導やキャリア教育は、そうと意識はしないままに、
いつの間にか大都市圏という生活空間を前提として理論化されてはこなかったか。
そうした点への反省も含めて、大いに考えさせられる調査結果である。

【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。

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