「どこまで上がるのか」筆者・青木勝美 更新日: 2025年4月11日
高校生のための進路ナビニュース
2025年がスタートして、1か月の間にさまざまな報道があった。
(※編注:本コラムは2月初旬に執筆いただきました)
気候変動の影響なのか、10年に一度レベルの“強烈な寒波襲来”による“警報級の大雪”により、
北陸や東北、北海道の各地方が豪雪に見舞われた。
また、夏の高温の影響と円安に起因する燃料価格の高騰などによる“食品や諸物価の高騰”。
米国では世界に影響するであろう“トランプ政権誕生”、ようやく叶った“ガザ停戦合意”など。
その中で、私の目を引いたのは、大手企業の大幅な初任給引き上げに関する記事であった。
2026年から、T保険会社が大学新卒者に対して条件付きではあるが、
“初任給最大41万円”に引き上げるという。
また、自社ブランドで衣料品を販売するF社は、1割増の33万円。
M銀行は約5万円増の30万円に引き上げるとのこと。その他の企業も追随することが期待できる。
さて、高卒就職者の場合、厚生労働省の発表によると2024年の初任給は、
地域差はあるが平均18万円半ばであった。対前年比4%半ば増となっている。
さらに、今年、来年ともに初任給の大幅な伸びが期待できることから、
全国平均は20万円を超えることが予想できる。
優秀な新卒者の獲得競争が激しさを増す売り手市場のなかで、
企業の担い手不足解消の手段として、手厚い未来への投資であると思われる。
しかし、まだ会社に貢献していない新入社員の給与が、
既存社員の給与よりも高くなるという逆転現象が起きている企業もあるとのことである。
企業にとって、既存社員に対する賃金・給与の底上げは、喫緊の課題である
「失われた30年」と言われているが、1995年頃から賃金・給与の伸びは鈍化したままであった。
それ以前の10年ほどは、好景気が続いたため給与は上昇傾向にあった。
私事だが、教職に就く前に民間企業に勤めていた。そのときに初めて支給された給与は、
厚生労働省による2024年大卒者賃金23万7千円とほぼ同額であったと記憶にある。
手にした給与には、残業代や交通費も含まれているが、社会保険料、税金が引かれている。
しかし、翌年、公立高校教員となり初めての給与明細を見て愕然とした。
サラリーマン時代の4分の3の金額、学生時代のアルバイト代とほぼ同額であったからである。
その後は、毎年のように公務員の給与改定が行われ、人並みの給与所得者になることができた。
それ以降のおよそ25年間は、日本を包み込んだデフレマインドにより、
諸物価は低く安定していたが、給与の伸びはなくなり、逆に減給となってしまった。
私のような経験をされた方は少なくないと思う。
一昨年から続く“賃上げブーム”の流れを変えず、失われた30年を取り戻してほしい。
ドル換算にすれば、まだまだ日本の若者の賃金は低い。
上がる余地は充分にある。しかし、これ以上、物価は上がってほしくないのだが。
【プロフィール】
1983年4月より群馬県公立高校教員として勤務
学科主任、学年主任、保健主事、進路指導主事等歴任
2019年、平成30年度 専門高校就職指導研究協議会全国発表
2022年3月、群馬県公立高校教員完全定年(再雇用含む)
2022年4月よりライセンスアカデミー東日本教育事業部顧問として、
おもに就職関係の進路講演、面接指導等を各学校で行う