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「こんな時代に生まれてきたのは幸せ、それとも……?」筆者・児美川孝一郎

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中学校や高校から、生徒向けに
進路選びやキャリアデザインに関する話をしてほしいという依頼をよく受ける。
かれこれ、10年以上(いや、もっと前からかもしれない)続いている。

そうした際、学校側が筆者に期待しているのは、
受験や就職に関する進路選択の具体的なノウハウではない。
そのことは自覚しているので、もっと大きな話をする。
今どきの中・高生が漕ぎ出ていくことになるのは、どんな社会なのか。
そうした社会に出ていくためには、どんな準備が必要なのか。
そのうえで、自分らしい進路を選ぶには、どうすればよいか、と。

そんな話の導入部では、第4次産業革命やSociety5.0、AIによる人間労働の代替、
日本の経済競争力の低下、人口減少と消滅可能性自治体、生涯未婚率の増加、
仕事でもプライベートでも「標準」的なライフコースが成立しなくなっている、
といった話を散々する。そのうえで、次のような問いを出すことにしている。
生徒のみなさんにとっては、こんな社会に生まれ落ちたことは「幸せ」ですか、
それとも「不運と感じること」ですか、と。

必ずどちらかには挙手するようにお願いする。
挙手の分布は、この10年あまり、一定の方向に変化してきている。
「意外にも」なのか、「当然のこと」なのかは、読者の判断にお任せするしかないが、
結論だけ言えば、前者の「幸せ」と思うに手を挙げる中・高生が、年々増えてきているのである。

これは、いったいどういうことなのか。
いくらリスクの話をしても、いまだ社会に出ているわけではない中・高生たちは、
それを「自分ごと」として受けとめていないのか。
それとも、そもそも現状以外の選択肢(オルタナティブ)など思い付かないのだから、
現状に満足するしかないと思っているのか。
あるいは、変化の激しい社会において、一定のリスクは覚悟しつつも、
自らのキャリア設計上の選択肢や可能性が増えていることを積極的に考えているのか。

正直、正確なことはわからない。しかし、こうした時代認識、あるいは社会認識の問題は、
若者のキャリア支援に携わる者にとって、かなり重要な事柄なのではないか。
若者たちのキャリア設計にかかわる価値意識のもっとも根幹にありそうなことだからである。
焦らずに、もう少し考え続けてみたい。

【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。

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