「教師の勢力資源―『準拠性』と『親近・受容性』」筆者・苅間澤勇人 更新日: 2025年2月14日
高校生のための進路ナビニュース
私が住む福島・会津には、11月が旬な「みしらず柿(身不知柿)」という特産品があります。
上品な甘みが特徴の柿で、私の大好物です。
実は、「みしらず柿」の名前にはいくつかの由来がありますが、
その一つは、枝が柿の重みで折れそうになるほど、
大きな実をたくさんつけることから来ていると言われています。
さて、今回は教師の勢力資源における「準拠性」と「親近・受容性」についてのお話です。
以前、私は高校の教師として数学と物理を教えていました。
もともと数学と物理が得意だったため、これらの教科の教員免許を取得しましたが、
これには少し背景があります。
中学時代の学級担任が数学の先生で、高校時代の学級担任が物理の先生でした。
さらに、ちょっとだけ自慢をお許しいただけるなら、
数学と物理の期末試験で一度だけ満点を取ったことがあります。
その当時、私は先生に認められたくて、一生懸命勉強しました。
学級担任であり教科担当の先生に対する好意や憧れが、私が教職を志すきっかけになりました。
このように、教師に対する好意や尊敬、憧れの気持ちが「準拠性」という資源です。
準拠性とは、教師のようになりたいと強く思い、
教師の行動や価値観を模倣したり、それを自分の中に取り入れたりすることを指します。
読者の中にも、私と同じような理由で教師を志した方も多いのではないでしょうか。
一方で、「親近・受容性」とは、教師に対して親近感を抱き、
教師が自分を受け入れてくれると感じられることです。
私の場合、高校時代に学級担任の家に数人で遊びに行ったことがあります。
先生と一緒にトランプをしたり、昼食にカレーをいただいたりしました。
また、中学時代の学級担任は、夏休みに学級行事としてキャンプを企画してくれるなど、
生徒の気持ちを大切にしてくれる先生でした。
そうした経験から、何でも相談できる先生という心の距離の近さを感じることができました。
「準拠性」と「親近・受容性」はどちらも「教師としての内面的な魅力」を表しています。
生徒にとって、教師が専門的な知識をわかりやすく教えるだけでなく、
生徒の気持ちも理解し、受け入れてくれる存在であることが、生徒の自尊心を高めます。
だから、教師の指導や援助を素直に受け入れることができるのです。
最後に、上品な甘さがとても美味しいため、「みしらず柿」を食べ過ぎてしまいます。
自分の身を顧みることなく食べ過ぎてしまうのです。
このことも、「みしらず柿」の名前の由来の一つです。
何事にも「自分を知ること」が大切だという教訓を改めて感じています。
(※編注:本コラムは2024年11月に執筆いただきました)
引用文献
河村茂雄『教師のためのソーシャル・スキル―子どもとの人間関係を深める技術』
(2002、誠信書房)
【プロフィール】
会津大学文化研究センター 教授 兼 学生部長
2015年から現職
専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援