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先生の言葉 筆者:羽根田 ひとみ

「走姿心現(そうししんげん)」。
ある工業高校の野球部の先生が、
いつも口にする言葉だ。
「走る姿にその人の心が現れる」を意味する。
同校の部員全員は、
その言葉が書かれたTシャツを身にまとって走っている。
その姿は、まさに彼らの心中を表しているのだ。
見ているこちらが、すがすがしい気持ちになる。
他にもいろいろな部活で
こうした言葉を背中に掲げる生徒を見かける。
彼らは先生の言葉を心に響かせ、練習に励んでいる。

ふと学生時代の恩師を思い出す。
その先生は授業の前に必ず
「宇宙よりも広いのは君たちの心だ」とおっしゃった。
あだ名は「ごま塩」。白髪混じりのおじさん先生だった。
私たちは、しばしばその先生の真似をした。
また、卒業式に毎年同じ式辞を述べる教育長がいらっしゃった。
「いまに見ていろ、ぼくだって、見上げるほどの大木に・・・」
登壇される前から、
その言葉が出てくるのを待ち望んでいた。

大人になる途中、辛いとき、
何度かそうした言葉を口にしたことがあった。
「先生の言葉」は、決してスルーされていない。
言い続けることで、いつまでも生徒の心に生き続けている。

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