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「縮小社会の学校小規模化をどう乗り越え、可能性をどう生かすか」筆者・葉養正明

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これまで数回、2050年時点での消滅可能性自治体とされる事例について、
教育像の描き方について考察を進めてきた。
いずれも離島の事例で、人口規模の縮小、学校の小規模化を想定している。
ところで、人口戦略会議による「消滅可能性自治体」の呼称は、
住民が満足できる生活を送れる圏域として自治体が成り立つには、
一定の人口規模が必要という観念を下地にしている。総務省の「定住自立圏構想」も同様である。
同構想を見ると、「定住自立圏」は「中心市」と「近隣市町村」とから形成される、としている。
なお、「中心市」とは、(1)人口50,000人程度以上(少なくとも40,000人超)、
(2)昼夜間人口比率は1以上、としている。
それに、「中心市」と近接し、経済、社会、文化又は住民生活等において、
密接な関係を有する市町村が「近隣市町村」として、「定住自立圏形成協定」を結ぶものとされる。
基礎になっているのは人口規模である。

以前本コラムで、「『測定執着』の歪み」について論じたが、
(※参照:https://shinronavi.com/news/detail/1622 )
住民の生活圏も学校再編にしても、人口規模や子ども数を絶対視することに歪みは生じないのだろうか。
今回からしばらく、縮小社会下で不可避とされる学校小規模化の課題や、
半面での可能性について考えることにしよう。
まず、ある県のある地域の小学校を隣接設置している小規模中学校訪問記から始めよう。
以下は、校長ヒアリングの記録である。

<小中隣接した学校の可能性>
○中学校長
併設校ではないので、それぞれ独自のカリキュラムを持っておりますけれども、
幾つか小中で合同でということはあります。
特に、去年、ことし、小・中でさらに進めていこうということで取り組みを強化しているんですが、
それ以前も小中合同の行事というのはありますし、
中学校の教員が小学校へ行って授業をするというようなことはどこでも同じと思います。
これは定期的にということではなくて、
中学校へ進学するのに合わせて中学校の教員が小学校の児童の様子を知ったり、
あるいは逆に小学校の児童が中学校の教育の様子を知ったりということで、やっております。
それから、PTAが、N学校PTAということで、PTAの組織が小中分かれておりません。
小・中合同のPTA組織になっております。
したがいまして、PTAの主催する事業には小・中合同のものが多々あります。
あさっての土曜日ですけれども、近くの川の橋の上手側で
小中合同の魚釣り・魚つかみ大会というのがPTAの主催で行われます。
この川は、アマゴとかアユ釣りの非常に盛んなところで、
地元の子供たちにも地域の自然の中でそういうものに親しもうということで、
ずっと続いている事業です。

それから本村は、一村一小学校一中学校ということで、
N小学校を卒業した子がすべてN中学校へ行くようになり、
ほかの学校からは来ないというところなものですから、非常に仲がいいんですね。
ですから中1ギャップということは、皆無ではないと思いますがほとんどないですね。
その分、課題のほうにも関わってくるんですけれども、
中学から高校へ行くときに全く知らない集団の中に飛び込んでいかなければいけない。
ことしの卒業生が9名、今、2年生が7名、1年生が10名ですけれども、
どんなに多くても同じ学校に2人から3人ということになりますので、
何百人の中に自分だけというような子も多いです。土地柄、A県の高校も受験をいたしますので、
そのようなことで、高校へ進学するところというのは子供たちにとって非常に関心のあることでもあり、
またかなり負担でもあるかなと思っています。
小・中の関係が近いということでは、例えば中学校側の家庭科の授業は小学校の施設を使っています。
それから、小学校のコンピューターの授業は、
中学校の2階にコンピューター室がありますが、それを使っております。
そういうことで、日常的に校舎の行き来がある。
うまく合同で使えるところは使っているという形になります。
小学校、中学校の、子供たちの人間関係が非常に密接であるということですね。
だから、人間関係は非常に安定していると思います。<次回に続く>

【プロフィール】
教育政策論、教育社会学専攻。大学教員として46年間過ごし、
現在は東京学芸大名誉教授、 国立教育政策研究所名誉所員。
「縮小社会研究会」(京大工学部等が組織)に所属し、
縮小社会下の教育について研究を進める。
大震災や戦乱などの社会変動のもとにおける教育復興と地域計画についても
関心を抱く。近年の論文等には、
「東日本大震災における宮古市の子どもの生活・学習環境意識の変化と
レジリエンスー縦断調査を通して」(『災害文化研究』第6号、2022年5月)、
単著、『人口減少社会の公立小中学校の設計
-東日本大震災からの教育復興の技術』(協同出版)、などがある。

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