「『令和の金の卵』たち」筆者・青木勝美 更新日: 2024年10月16日
高校生のための進路ナビニュース
“企業は不足する人手を確保しようと必死だ。
(中略)「入社お祝い金50万円」「大卒との給料差なし」「髪色自由」
などをアピールする企業もあった。”
上記は、8月25日朝日新聞に掲載された「高卒採用 乗り出す企業」
(7月中旬、大阪市で開かれた高校生向け合同説明会)の記事から。
厚生労働省によると高校生の求職者数は、7月末時点で約12万6千人(前年同期比0.1%減)。
対して企業からの求人数は約46万5千人(同4.8%増)で、
求人倍率は3.70倍となりバブル期を超えて、この時点で過去最高であるとのことである。
最終的には4倍超になることも予想される。
また、就職試験開始日である9月16日の日本経済新聞では、
“少子高齢化で若手人材の確保が難しくなる中、
大卒に加えて高卒も取り込もうとする動きが目立つ。
求人倍率は過去最高で(中略)採用難は深刻だ。
各社は賃上げなどで、令和の「金の卵」に自社の魅力をアピールする。”とあった。
「金の卵」という言葉を、私は幼少時にラジオやテレビでたびたび聞いていた。
このころ、イソップ寓話の“金の卵を産むニワトリ(またはガチョウ)”を読んでいたためか、
いかにも“貴重”で“高価”な「金の卵」に憧れを持っていた。
長じて、「金の卵」は、高度経済成長期(昭和30年~昭和47年ごろまで)に義務教育を終え、
就職を希望する若年層のことであり、
まさに戦後復興から経済成長を支えた重要な労働力であったことを知る。
高度経済成長期が去りリセッション期に入り、
高校進学率が高くなるとともに、この言葉は聞かれなくなった。
超売り手市場となったバブル期においても、あまり使われていなかったようである。
21世紀令和の時代となり、「金の卵」が復活した背景には、
少子化により数年先に労働人口が大きく減少することが、現実であるからである。
企業存続のためには、人材確保は必須の課題となる。
今後も「令和の金の卵」の争奪戦は、より苛酷になることが予想される。
イソップ寓話の「金の卵を産むニワトリ」の結末は、
“金の卵のおかげで金持ちになった農夫は、
1日1個しか卵を産まないニワトリに物足りなさを感じ、
きっと腹の中には金塊が詰まっているに違いないと考えるようになった。
そして欲を出した農夫はニワトリの腹を切り裂いた。
ところが腹の中に金塊などなく、その上ニワトリまで死なせてしまった。
農夫はもとのように貧しくなり、金の卵を産むニワトリも二度と手に入らなかった”
となっていたと思うのだが。
買い手(企業)は、給与や諸々の待遇面についての見直し、研修・リスキリングの導入により、
可能性と希望がたくさん詰まっている「令和の金の卵」たちを孵化させ、
ひよこから徐々に成長させてほしいと切に願うばかりである。
【プロフィール】
1983年4月より群馬県公立高校教員として勤務
学科主任、学年主任、保健主事、進路指導主事等歴任
2019年、平成30年度 専門高校就職指導研究協議会全国発表
2022年3月、群馬県公立高校教員完全定年(再雇用含む)
2022年4月よりライセンスアカデミー東日本教育事業部顧問として、
おもに就職関係の進路講演、面接指導等を各学校で行う