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「修学支援新制度の拡大」筆者・桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之

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前回(※)、授業料と奨学金をセットで考えることがきわめて重要であることを再度指摘した。
(※参照:https://shinronavi.com/news/detail/1901 )
これに関連して、すでに決定している修学支援新制度の中間所得層への拡大、
多子世帯や私立大学理系への拡充にくわえ、6月の骨太の方針で、
「2025年度から、多子世帯の学生等については授業料等を無償とする措置等を講ずる」
としている拡大の問題点について考えたい。
あまり問題にされていないが、前者の支援は授業料減免と給付型奨学金のセットだが、
後者の多子世帯への支援は、所得制限はないものの授業料減免のみで、
給付型奨学金は含まれていない。
ここでも授業料と奨学金をセットにしない恣意的な制度変更により、
制度全体の整合性が損なわれていて、ますます制度が複雑化し、わかりにくくなっている。

ネットなどで批判されているのは、この対象の「多子世帯」の定義で、
「扶養される子供が3人以上の世帯(扶養する子供が3人以上いる間は第1子から無償の対象)」
とされている点である。
つまり、扶養する子供が3人いる場合には、私立で約70万円の授業料減免が受けられる。
しかし、扶養する子供が2人の場合には全く支援はない。
3人とも高等教育在学の場合には、3人とも受けられるのであるから、
約210万円の支援が受けられることになる。
これでは不公平だという批判が起こるのは当然だろう。
しかも、たとえば、第1子が卒業などで扶養から外れれば、支援は全く受けられない。
この点でも差が大きすぎるのである。

本コラムでも、壁効果の問題、
こうした支援の額が年収の1円の差で大きく変わってしまうことの問題点を指摘してきた。
これまでは住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯など低所得層だけの問題だったが、
今回の政策は所得制限なしなので、対象は低中所得層のみならず全所得層に拡大した。
以前の制度の問題点をさらに広げることとなったのである。

【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。

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