「雑談力」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央 更新日: 2024年9月30日
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日本人のコミュニケーションの取り方を一言で表すと、
昭和のCM「男は黙ってサッポロビール」に行きつくのではないでしょうか。
言葉にしなくても分かり合える、
それが日本人にとって最良のコミュニケーション手段だったのです。
ただ、こんな日本人でも外国の人と仕事をするときには、
きちんと話をしなければなりません。
互いの考え方が違っているので、正確に話さないと、仕事が上手く進まないからです。
そのため、仕事上の話、すなわち「ある程度決まった内容の話」なら、
日本人でもできるのですが……。
豈図らんや外国人は「仕事以外の雑談」をとても大切にしています。
「雑談」から多くの情報を汲み取ろうとしているからです。
そのため、その内容は、日本人が飲み屋でする会話
(ゴルフのスコアやプロ野球の結果、仕事・上司のぐち)レベルではありません。
音楽、芸術、映画、文学、スポーツ等にとどまらず、
旅行の予定や家族のことなど、とても豊かで、しかも柔軟です。
それは、互いに「本当に信頼できるヤツ」なのか「信用していい人」なのか
「尊敬できる相手」なのかを仕事以外の会話で判断しているからです。
雑談の中から相手の人間性を見抜き、適切な人間関係を築き、心を通じあわせているのです。
そんな雑談をするために、彼らは常に勉強をしています。
だから、話のレベルが非常に高いのです。
しかし、多くの日本人は、そんな雑談に入っていくことができません。
だって、日本語ですら面白い話をすることが苦手なのに、ましてや英語では……。
ところが、雑談の輪の中に入っていけないと、大変なことになってしまいます。
というのも、雑談で人間関係を築いている彼らにとって、
「仕事以外の話ができない人」は「その程度の人間」であり「信用できない人」だからです。
一度そんな烙印を押されてしまうと、本来の仕事にも悪影響を及ぼしてしまいます。
国際化・グローバルが声高に叫ばれている今、
世界で信用を得るためには、深みのある雑談力を身に付けなければなりません。
そこで必要となるのが教育です。
ただし、それは英語を話せるようになることではありません。
重要なのは、雑談する力を支える「教養を身に付けること」なのです。教養、すなわち、
「幅広い分野の知識をつける」「柔軟な発想力と論理的な思考力を育む」ことこそが、
国際化に向けて欠くことのできない教育の両輪です。
深みのある雑談をするのは、とても大切なことです。
これからは黙ってビールを飲むのではなく、
豊かな雑談とともに楽しいビールを飲みたいものです。
【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam5/