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「大学授業料と授業料減免・給付型奨学金(1)」筆者・桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之

高校生のための進路ナビニュース

これまで何回かアメリカの学生支援の動向を追ってきた。
大統領選挙やイスラエルのガザ侵攻などの状況の変化によって、
今後学生支援にも大きな変化が起きる可能性がある。
しかし、現状については、これまで説明してきたとおりであるので、
大きな変化がない限り、今回からは日本の問題に戻って考えたい。

というのも大学授業料が久しぶりに大きな話題になっているからだ。
1つは、中教審での慶應義塾大学の伊藤塾長の
国立大学授業料の大幅な値上げ(現行の約54万円から150万円に引き上げ)発言、
もう一つは東京大学が授業料の値上げを検討している(※)というニュースである。
(※編注:9月24日、東京大学の授業料値上げが正式に決定した。)

以前のメルマガでも説明してきたが、授業料の問題は授業料だけではなく、学生への経済的支援、
特に給付型奨学金と授業料減免をセットにして検討することが何より重要である。
募集要項などで大学が公式に提示している授業料を定価授業料と呼ぶ。
これに対して、定価授業料から給付型奨学金や授業料減免を引いた額が、
学生や保護者が実際に支払う授業料である。これを純授業料とか実質授業料と言う。

これまで、日本では、給付型奨学金や授業料減免が少なかったため、
純授業料や実質授業料はあまり問題にされてこなかった。
しかし、学生支援が多いアメリカでは、
つとに定価授業料ではなく、純授業料が問題とされている。
これに対して、日本でも2017年度の日本学生支援機構の給付型奨学金の創設や、
2020年の修学支援新制度による給付型奨学金と授業料減免の大幅な拡充によって、
定価授業料だけでなく、純授業料をみていくことが重要となっている。
この点に留意して次回以降、日本の授業料問題を検討していきたい。

【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。

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