「教師のリーダーシップに活かすための勢力資源」筆者・苅間澤勇人 更新日: 2024年9月21日
高校生のための進路ナビニュース
複雑な動きをする台風が過ぎても、次々と新たな台風が発生しています。
これ以上、大きな被害が出ることなく秋を迎えたいものです。
さて、新学期がスタートしました。休みを終えて登校した生徒たちの様子はどうでしょうか。
生活リズムの変化によって、生活態度が乱れている生徒が複数いる場合、
もう一度、学級全体で学校生活のルールを確立する必要があります。
そのためには、前回(※)のリーダーシップで示した、P機能(指示的対応)の発揮が求められます。
生徒の状況に合ったリーダーシップを発揮するのがポイントです。
(※参照:https://shinronavi.com/news/detail/1885 )
ところで、生徒が教師の指導や支援を受け入れて態度を改めるのは、どういう理由からでしょうか。
例えば、ある生徒が教師の指導を静かに聞いているのは、
そういう姿勢を示さないと注意を受けると思っている(罰の勢力)からかもしれません。
あるいは、教師が熱心に指導する姿に信頼感を持った(準拠性の勢力)からかもしれません。
このように、生徒たちには教師の指導を受け入れる理由があります。
心理学では、生徒たちが教師に何らかの「勢力」を感じて、その勢力に従うと考えられています。
それを「勢力資源」と呼びます。
ある一人の教師に対して生徒たちが感じる「勢力」は生徒ごとに異なります。
また、教師ごとにも異なります。
では、生徒たちは教師にどのような勢力を感じているでしょうか。
それを教師自身が知ることで、リーダーシップを工夫することができます。
河村茂雄・早稲田大学教授(2002)によると、教師の勢力資源は七つに分類されます。
(1)親近・受容性(親近感や被受容感などの内面的魅力に基づくもの)。
(2)外見性(外見的容姿のポジティブな評価に基づくもの)。
(3)正当性(教師の役割や社会的地位を当然とすることに基づくもの)。
(4)明朗性(教師の性格上の明るさや関わる楽しさに基づくもの)。
(5)罰(教師に対する畏怖の感情に基づくもの)。
(6)熟練性(教師の持つ専門性や熟練度に基づく勢力資源)。
(7)準拠性(好意や尊敬の念、信頼感など自分にとって好ましい人物への同化に基づくもの)
です。
教師が生徒の生活態度の乱れに対して指導した際に、生徒がその指導に従わないときは、
教師が生徒から勢力資源を感じられていないからです。
次回から、より詳しく教師の勢力資源を説明したいと思います。
秋に向かい、収穫の時期が楽しみになります。
学級集団づくりでも、いい成果が得られるように、教師のリーダーシップを工夫したいと思います。
引用文献
河村茂雄『教師のためのソーシャル・スキル-子どもとの人間関係を深める技術』
(2002、誠信書房)
【プロフィール】
会津大学文化研究センター 教授 兼 学生部長
2015年から現職
専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援