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「高卒求人・高卒就職支援シリーズ(17)求人票は良識の目でチェック」筆者・小林英明

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10年ほど前の7月、学校に届いたある求人票に目が点になった。
「仕事の内容」欄が「街頭アンケートや電話案内でお客様と接触し、
ワンルームマンション投資に興味を持っていただけたら営業所にご案内し、
詳しく説明してご契約いただく」というものだったのだ。
これは明らかにキャッチセールス、アポイントメントセールスだ。
当然、この求人票は生徒閲覧用ファイルには入らず、
進路指導部の特別資料のファイルに入ることとなった。
ここにはそれまでの「問題求人票」も何枚か入っていたが、このタイプは初めてだった。
ちなみに「先客」の求人票は、性別による差別的な募集が疑われるものや選考日が異常に遅い、
選考日から採否通知までが異常に長い等だったと記憶している。

さて、なぜ10年も前のことを今、思い出したか。それは最近同じような求人票を見たからである。
もちろん職安の確認印があり、現在有効な求人である。
従ってここに詳しく書いて企業が特定されると、
「求人活動の妨害」としてクレームが来かねないので詳細は控えるが、
扱う商品は違うものの「電話」が「SNS」に変わったくらいで10年前に見たものとそっくりだ。
長時間の接客をするという説明に至っては危険な匂いも漂う。
この求人票を私に見せた先生によると届いた求人票の束を職種別に分け、
待たせていた生徒に閲覧を許したところ、
高額な給与にひかれた生徒が「これ、いいかも……」と持ってきたということである。
内容を確認して驚き、この求人の危うさを説明して閲覧に出すことは止めたが、
このような内容でも興味を持ってしまう生徒にも驚いたそうだ。

現在の多くの学校では生徒が興味を持った求人は教員が再度目を通し、
保護者にも相談するように指導しているのでこのような求人で応募に至ることは考えにくい。
しかし、今後求人票のデジタル化、求人票整理の業者委託、
スマホやタブレットによる時間や場所の制約を受けない生徒の求人票閲覧等が拡大し、
業者の仲介によって見学手続きが簡素化されたりすると、
求人票への教員のチェックが不十分になる可能性は否定できない。
教員時代、職安の学卒担当から、
「職安では(労働関連各法に関わる)法的な間違いや違反しかチェックできない」
という話を聞いたことがある。一方で冒頭の求人票の件を話したら、
「私のところに来たら絶対に通さない」と言った別の職安の学卒担当者もいた。
当時は担当者の良識に頼っていたのだろうか。
もしもこのような状況が現在も続いているとすれば、
職安による受付時のチェックにもあまり期待できそうにない。
結局、最も頼れる存在であるべきは常に生徒と共にいる就職指導教員ということになるだろう。
生徒に対しても、社会に対してもその責任は重い。

【プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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