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「高卒求人・高卒就職支援シリーズ(16)採用内定と個人情報」筆者・小林英明

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昨年のことである。
ある研究会の場で採用担当者から、内定者に入社後の特別な配慮が必要な場合は、
職場不適応や早期離職を防ぐため入社までに対応の準備をしたい。
そのために必要と思われる生徒の情報を学校から提供してもらうことはできないだろうか、
という旨の質問があった。
私立高校の教員から、
「教員はあくまでも定められたルールに則って就職指導をしなければならないので、
個人情報の提供は無理である」という原則論が語られた。
一方で特別支援学校教員からは、
「障害のある生徒の就労に際しては職場実習をさせてもらうことでマッチングを図り、
生徒の情報共有がなされた上で受け入れてもらっている」という実例から、
実質的に生徒情報が伝えられている、という現状報告があった。
さらにエンカレッジスクールからは「新入生200人全員の出身中学校に依頼をして、
生徒一人ひとりの情報提供を受け、入学後の個別支援につなげている」と
「中学から高校への個人情報の引継ぎ」が成果を上げている実践報告があった。
また、定時制からは早期離職や職場トラブルを防ぐため、生徒には、
「困ったときはひとりで抱えるのではなく周囲に『困った』と言える人になろう」と、
社会人として必要な情報は自ら伝えられるように指導しているという事例も出された。

会場の参加者からは入社後の職場定着のための情報提供と個人情報保護の扱いをめぐっては、
生徒の入社後の幸せまで考えて何をどう伝えるか、
企業と学校の「あうんの呼吸」も大切ではないかという意見もあった。
「個人情報の保護」の目的が「個人の人権」を護るためならば、
就職後の「不利益の可能性」を回避するために
学校と企業が生徒に関する特定の情報を共有することはあっても不思議はない。
しかし学校は在籍生徒の個人情報を外部に漏らさないことを厳しく求められている。

個人情報の扱いには慎重であるべきだ。
しかし内定先が、生徒本人の特定の個人情報を学校と共有することで、
生徒の健全な社会人生活の確立、維持が期待できるほどの信頼と実績を持つ企業ならば、
教員は「どの情報を、いつ、誰が、どのような形で内定先に伝えることが適切か」を
生徒、保護者、必要ならば学校長も交えて話し合い、
その結果に基づいて内定先に伝えるという方法をとることは可能だろう。
また、企業から学校に
「内定者には入社後特別な配慮が必要か、必要なら入社に向けての準備をしたい」
と問い合わせることがあると話は進めやすいだろう。

個人情報保護の規定は遵守しなければならないが「特別な配慮が必要な生徒」に対して、
入社までにその「特別な配慮」を準備しようとする企業の存在はありがたい。
多少の手間と時間がかかっても本人、保護者の理解を求めつつ企業の努力には応えたい。

【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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