大学・短大・専門学校の情報を掲載!高校生のための進路情報サイト

高校生のための進路サイト

進路ナビニュース

「学級経営に活かす教師のリーダーシップ」筆者・苅間澤勇人

高校生のための進路ナビニュース

今年の夏も強烈な暑(熱)さに加え、大雨や台風による災害がありましたが、
皆様は十分に休養して鋭気を養われたでしょうか。

前回まで、「学級経営に活かす教師のリーダーシップ」についてお伝えしてきました。
今回は、それを整理してお伝えしたいと思います。
世界中の多くのリーダーシップ研究で、「指導性」と「援助性」の2軸で捉えることが指摘されています。
日本においては、社会心理学者の三隅二不二先生が約20年にわたり、
15万人以上の企業組織の社員等を対象に調査・研究を重ね、
優れたリーダーの行動特性「PM理論」を明らかにしました。
PM理論の「P」はPerformanceで、「目標達成・課題解決機能」を意味します。
つまり集団の目標達成への働きかけです。
例えば、学校では教育成果を求める働きかけである学習指導や生徒指導などがこれに該当します。
一方、「M」は、Maintenanceで、集団維持機能を意味します、つまり人間関係への働きかけです。
例えば、不安や緊張を緩和したり、激励して元気づけたり、
時には対立を和解に導いたりする援助や支援がこれに当たります。
そして、「P」と「M」の双方を発揮する「PM型」のリーダーシップを示すリーダーが、
最も高い業績を上げることを明らかにしました。

PM理論に「集団や組織の成熟度」という軸を加えた理論が、
「SL理論(状況対応型リーダーシップ:Situational Leadership)」です。
SL理論は、行動科学者であるポール・ハーシーと
組織心理学者のケネス・ブランチャードによって提唱されました。
前回までは、学級経営にSL理論を用いた介入方法を紹介しました。
すなわち、4月、つまり集団の成熟度が低いときには、
進むべき方向と望ましい行動をしっかりと示す「教示的リーダーシップ」が有効でした。
つぎに5月、つまり集団の成熟度が少し高くなったときには、
考え方や行動の意味を具体的かつ丁寧に伝えて納得を得る「説得的リーダーシップ」が有効でした。
続けて6月、つまり集団の成熟度がさらに高くなり、考え方や行動が身についたときには、
うまくできていることを称賛しながら一緒に歩む「参加的リーダーシップ」が有効でした。
そして7月、集団の成熟度が熟練になったときには、
生徒たちを信じ、決定と執行の責任を委任する「委任的リーダーシップ」が有効でした。
SL理論では、唯一絶対のリーダーシップは存在せず、
メンバー(生徒)との関係や集団の成熟度に応じて
柔軟にリーダーシップのスタイルを変えていくことが重要であると考えられています。

引用文献
三隅二不二(1966).新しいリーダーシップ 集団指導の行動科学 ダイヤモンド社
P.ハーシー・K.H.ブランチャード (訳)山本成二・水野基・成田攻(1978).
入門から応用へ 行動科学の展開―人的資源の活用― 生産性出版

【プロフィール】
会津大学文化研究センター 教授 兼 学生部長
2015年から現職
専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援

TOP