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「アメリカの大学と議会の対立」筆者・桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之

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アメリカの大学が大きく揺れている。
ことの発端は、イスラエルのガザへの攻撃に対して、
多くの大学で学生がキャンパスで泊まり込みなど、抗議活動を行ったことだった。
とくに、コロンビア大学では、学生にハミルトン・ホールが占拠された。
これは、1968年にも同じようなことが起こった。
この様子は、『いちご白書』や『コロンビア大学の危機』(東京大学出版会)などで、
日本でも知られている。
最終的に学生を強制排除したのは同じだが、今回の事件は、
アメリカの社会が抱える深刻な分裂と大学が無縁ではないことを浮き彫りにした。
この問題に関するコロンビア大学の下院議会公聴会に先立ち、アメリカ議会下院は公聴会で、
ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、ペンシルベニア大学の学長に、
この事件について見解を求めた。
そして、そこで反ユダヤ主義を明確に否定しなかったとして、
ハーバード大学とペンシルベニア大学の学長は辞任に追い込まれる事態となった。
この背景には議会だけでなく大学の有力な寄付者や理事などのユダヤ系の金融関係者が、
大学に圧力をかけたことがあると言われている。

これに対して、コロンビア大学の学長は、
同大学で反ユダヤ主義的な言説をしている教員や研究者を解雇すると言明した。
この結果、同学長は辞任することはなかった。
なお、マサチューセッツ工科大学の学長は辞任していない。
アメリカの大学の給付型奨学金の原資は、寄付や基金の運用益である。しかし、今回の事態は、
寄付や基金などによる収入に依存するアメリカの大学の脆弱さを示すことになった。
アメリカの大学でも政府と大学は常に緊張関係にあるが、
これほど露骨に議会が大学に介入したことは、今後の大学の自治に暗い影を落とすこととなった。

【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。

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