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「『離職者数(率)』より『定着者数(率)』」筆者・青木勝美

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退職代行サービスの利用者が急増しているという。
依頼者に代わって退職の意向を勤務先に伝え、必要な手続きも代行するとのことである。
2年前にこの代行サービスを耳にしていたが、
はたしてこのサービス、ビジネスになるのかと思っていたが、今はかなり盛況らしい。
ある代行サービス会社によると4月だけで約1400人がサービスを利用し、
そのうちの200人以上が新卒で入社した人だという。
さらに5月の連休明けに急増しているとの報道があった。
昭和のオヤジからすると、今の若い者は「根性なし」「礼儀知らず」と叱責したくなる。
しかし、「若者たちは自身に合わないと思われる職場にズルズルいるより、
短期間で何のあと腐れもなく退職することで、ストレスを抑えられ、
次の職場に向かうエネルギーとなる」という主旨の新聞記事を目にし、
最近の若者気質と、退職(離職)に対して寛容になりつつある世間の空気を感じている昨今である。

厚生労働省の統計によると、令和2年3月新規学卒者の3年間(令和5年現在)の離職率は、
高校卒37.0%(昨年比+1.1ポイント)、大学卒32.3%(昨年比+0.8ポイント)となっている。
高校卒の内容を詳細に見ると、
1年目15.1%、2年目11.7%、3年目10.2%と年数が経過すると減少している。
これは過去の統計も同様の傾向を示している。
コロナ禍の影響なのか、令和3年、4年の1年目の離職率が高くなっているのは気になる。
しかし、ふた昔前から比較し10%以上減少しているのは、企業の努力による賜物と思われる。

生徒の多くが、求人票「3.労働条件等」の項目と同様に、
最後の項目「青少年雇用情報」にある離職者数を見ている。
この会社は「働きやすいだろうか」「長く勤められるだろうか」と想像を膨らませ、
自己の働く姿をイメージするのである。
この「離職者数」が「定着者数(定着率)」で表されていたなら、
もっと前向きで積極的な就業イメージにつながるのではないだろうか。
先に書いた高卒離職率37.0%を逆に見れば、定着率は6割を超えていることになる。
6割以上の人々が、3年間職場を変えずに継続して就業しているのである。
高校生の就職活動が短期間であるにもかかわらず、
大学卒と数パーセントしか差がないのは、評価されるべきだと思う。

これから、労働人口の減少は確実である。
各企業は、給与、休日をはじめさまざまな待遇面の改善をして働き手の獲得に取り組んでいる。
その結果なのか、定着率が100%の会社も数多くある。
「離職数(率)」より「定着数(率)」のようにポジティブな数値を提示することにより、
就職に向かう若者の意識が少しでも明るくなればと思っている。
さらに、退職(離職)に対して寛容な社会にマッチするのではなかろうか。

【プロフィール】
1983年4月より群馬県公立高校教員として勤務
学科主任、学年主任、保健主事、進路指導主事等歴任
2019年、平成30年度 専門高校就職指導研究協議会全国発表
2022年3月、群馬県公立高校教員完全定年(再雇用含む)
2022年4月よりライセンスアカデミー東日本教育事業部顧問として、
おもに就職関係の進路講演、面接指導等を各学校で行う

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