進路ナビニュース

「間違った勉強法」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

高校生のための進路ナビニュース

以前、生徒が「この単語の意味、教えて」と聞いてきたことがありました。
その時には、辞書で調べるように伝えたのですが、すると、
「塾の先生はすぐに教えてくれるのに。先生は、知っているのに教えてくれない悪い先生」
と言われてしまいました。
ただ、このような「その場しのぎの質問」をする生徒は伸びません。
分からないことがあればまずは調べ、考えて、
その上で質問しなければ知識は定着しないからです。

ところで、「分からない」とはどういうことなのでしょう。
それは「その問題のその部分が分からない」という単純なものではなく、
「どうして、その疑問が出るのか」「どうして、それを解決できないのか」なのです。
それなのに、すぐに答えを教えてもらったところで、
次にまた同じことを繰り返すに違いありません。

また、最近はよく「理解することが大切だ」と言われます。
そして、それによって学力がつくのだと。
確かに、数学等で「公式を覚える勉強」に意味はありません。
公式の意味が分からないと、公式を使って解答する「単なる作業」になってしまうからです。
しかし、公式を理解したからといって、
問題を解く度にいちいち公式を導き出していたら、時間が足りなくなってしまいます。
つまり、理解した上で、次からそれを使えるようにしておくことが大切なのです。
理解することと覚えることは、学力向上の両輪です。
理解しているのに練習問題を解かなければならないのは、知識を定着させることが大切だからです。

最近の子どもたちは、幼いころから、
「分からないことは、すぐに教えてもらう」、「簡単に答えが出る方法を教えてもらう」、
そして「できたら褒められる」、そんな勉強で育っているようです。
そのため、答えを出すことに価値を求め、
その意味や仕組み、導き出す論理に関心を示さなくなっています。
とにかく「答えを出したい」、そして「答えが出たらそれで終わり」だと。
しかし、そんな勉強では本当の力はつきません。

今では、大学入試も変わっています。
知識、学力だけで選抜するのではない「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」が増加しており、
例えば東京大学法学部の「学校推薦型選抜」の面接では、
「少人数でのディスカッション」が行われています。
そして、2023年度の大学入試では、
「総合型選抜」と「学校推薦型選抜」を合わせた入学生の割合が、
「一般選抜」での入学生を上回っています。

知識偏重の受験対策だけが勉強ではありません。
知識とともに、いろいろと考え、それを使えるようになることが大切な勉強なのです。
教える側、学校や先生も変わらなければならない、そんな時代がやってきたのではないでしょうか。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam5/

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