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「バイデン政権の学資ローン救済策(2)」筆者・桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之

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前回(※)のコラムでは、
バイデン政権は、一昨年8月、連邦学資ローンの大規模な救済策を発表したが、
連邦最高裁判所は、この救済策は違憲との判断を示したことを紹介した。
(※参照:https://shinronavi.com/news/detail/1845 )

これに対して、バイデン政権は、今年2月に新しいローン救済策を発表した。
新提案は、負債額1万2000ドル未満の者について、返済を10年続けることを条件に、
新たに1,800億円を帳消しにするというものである。
1月発足の政府プラン(SAVE, The Saving on a Valuable Education)に加入した15万人が
対象で、累計で390万人が恩恵を受けると見られる(ブルーズバーグ 2月21日)
これまでもいくつかの連邦学資ローンでは返済を20年あるいは25年続けた場合、
残額が帳消しになる制度はある。
また、公職(公務員だけでなく、NGOなども含む)に就いた場合には、10年で帳消しになる制度もある。
その意味では、従来の制度の一部の拡充とも言える。
さらに、バイデン政権は、4月に、27.7万人を対象に74億ドルの学生ローンを免除したと発表した。
これで、累計で430万人を対象に1,530億ドルが免除されることになるという。
これにより、進学者の増加や、経済的には、消費拡大効果が期待できるとされている
(JETRO 4月15日)。

日本でも所得連動型返還など、返済の負担を軽減する制度は2017年度にようやく導入されたが、
既に返済をしている者に対する帳消し制度は、本人死亡などごく一部に限られている。
バイデン政権の新しいローン救済策が、果たして上記のような経済効果をもたらすかは
予断を許さないが、日本の負担軽減制度とは大きな差がある。

【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。

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