「学級集団の質を高める」筆者・会津大学文化研究センター 教授 苅間澤勇人 更新日: 2024年6月22日
高校生のための進路ナビニュース
初夏となり、若葉が成長して深緑に輝いています。
さて、学級づくりは順調ですか。
前回までにお伝えした「教示的」「説得的」なリーダーシップを
発揮された先生方の学級は、学級目標に生徒たちのベクトルが向かい、
明るく楽しい雰囲気に満ちあふれる望ましい状態になったと思います。しかし、ここで注意が必要です。
それは明るく楽しい学級の状態に停滞して、より高い成果を求めなくなってしまうことです。
より高い成果とは、生徒たちがより深い信頼関係でつながり、
対話的な活動を通して創造的な問題解決ができることです。
停滞の原因の一つは、学級担任が明るく楽しい学級の状態に満足してしまうことと、
生徒たちがより高い成果を求めていることに教師が気づかないことです。
これについて、大村はま先生(1996)は「新編 教えるということ」(ちくま学芸文庫)で、
子どもたちはいずれ教師を超えて羽ばたいていくのであり、
教師は子どもに敬意をもって接するべきであると述べています。
つまり、教師は生徒たちを低く見て、勝手に成長の枠を設けてはいけないのです。
ではどうするか。
生徒たちが望ましい学級で羽ばたくために効果的な学級担任のリーダーシップを示します。
それは「参加的リーダーシップ」です。
4月からの指導によって、生徒たちは学級内で互いを尊重して、
合意形成ができるようになってきています。今後、それを促進するのです。
具体的には、学級担任が中心の指導を減らして、生徒たちに舵取りを任せます。
学級担任は学級の一員として参加して、意欲を喚起するために時折学級目標やビジョンを提示します。
その根底には、学級担任が生徒たちの力を心底信じることが必要です。
生徒たちは仲間とともに自らの力で成し遂げると、学級に貢献する意識や行動が高まり、
「この学級が最高!」「この学級でよかった」と発言するようになります。
参加的リーダーシップは、効果があらわれるまでに時間がかかることもありますが、
うまく作用すると生徒同士の意見交流が活性化して創造的な思考ができるとともに、
生徒同士の信頼が一層高まります。
深緑は太陽の光を受けて、養分(エネルギー)を作り出します。
そのような活力に満ちた学級を目指したいと思います。
【プロフィール】
2015年から現職
専門領域は「教育学」「教育カウンセリング心理学」
研究テーマは教育困難校での支援