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「当たり前って何」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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小学生の時、先生が授業中にされた雑談で、頭の中が「?」となったことがあります。
それは、「地球上に直線は存在しない」というものでした。
そして、それを証明するために先生は地球儀をもってくると、定規を当てて直線を引いたのですが……。
地球儀を一周させて引いた直線が「ほら、円になったやろ」と言われたのです。
どういう話の流れからこういう授業(雑談?)になったのかは覚えていませんが、
その後も私はずっと「直線が円になる不思議」が頭から離れませんでした。
今思うと、これは非ユークリッド幾何学(曲がった空間の幾何学)だったんですね。
事実これは正しい理論であり、それが証拠に現在のGPSシステムにおいても
一般相対性理論(非ユークリッド幾何学が使われている)に基づいた補正がなされなければ、
100m程度の誤差が生じるそうですから。
ただ、私にとっては、小学生の時に
「地球上に直線は存在しない、という不思議な話を聞いたこと」が重要で、
これによって「当たり前を鵜呑みにしてはいけない」と考える感覚が培われたように思います。

ところで、『当たり前』とは何でしょう。確認のために調べてみたところ、
「一般的に認識され、疑問を持たれることの少ない事象や状態」
「世間一般的にみて当然のこと、誰から見ても、誰が考えても明白で疑う余地がない様子を意味する」
とありました。確かに、当たり前です。
ですが、当たり前を当たり前として無条件に受け入れることが正しいとは限りません。
逆に、「自分の感覚が正しくて、それが当たり前なんだ」と押しつけるのは大間違いです。
だって、直線ですら当たり前ではないのですから。

では、当たり前って何でしょう。
それは、「自分にとっての当たり前」なのか、「世間から見ての当たり前」なのか、
「世界に通じる当たり前」なのか、「宇宙につながる当たり前」なのか、です。
当たり前を身につけるには、それを判断できる能力をつけることが必要です。
少なくとも自分が当たり前だと考えていることが相手の当たり前と同じなのか、
もし異なっていたならばどう対応すればよいのか、それを判断する力がなければならないのです。
つまり、広い視野を持つことです。
そして、そのために必要なのが、いろいろな分野に興味関心をもたせる教育だと考えます。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』

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