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「平均寿命」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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厚生労働省の発表によると平均寿命(2022年分)が男性 81.05年、女性87.09年になったそうです。
私の生まれた頃(1964年)は、男性67.67年、女性72.87年だったので、
15年も伸びています。
こんな数字を見ると「自分も81歳まで生きられるのか」、
もしくは人によっては「81歳までしか生きられないのか」なんて思ってしまいます。
しかし、そう考えるのは正しい判断とは言えません。
というのも、いくつかの理由があるからです。

〇日本の厚生労働省が発表している平均寿命は、
ある年齢以上のデータについては除外して計算しています。
これは、高齢データを入れて計算すると、
その生死によって統計の数字が大きくブレるからです。
少し古い数字ですが2009年度は98歳以上の男性と
103歳以上の女性に関するデータは取り除いて計算されています。
→つまり、日本では100歳前後以上の人のデータは含まれないので、
 彼らのデータを加えて計算すると、もっと平均寿命が伸びます。

〇平均寿命は、年齢別の人口と死亡率を基にして算出しています。
例えば、平成17年の0歳男子の死亡率は0.298%なので、
10万人中で1歳を迎えられるのは99,764人。
1歳の死亡率は0.045%なので2歳を迎えられるのは99,764人のうちの99,680人。
こうして除外年齢に達するまで計算し、
そこから算出したものが0歳児の平均余命(=平均寿命)となります。
→ということは、死産などで0歳児が死ぬことは限りなく0に近づいている上に、
 幼少時に命を落とす子供も極端に少なくなっている日本では、平均寿命も高くなってしまいます。

〇平均寿命は「その年に生まれた0歳児が、何歳まで生きるか」を予想した値です。
→そのため、1964年生まれの私が2022年に算出された平均寿命81.05歳まで生きるのではなく、
 あくまでも1964年に算出された67.67歳が私の寿命の予想値となります。

やはり、政府が発表している平均寿命を鵜呑みにして自分の余命を考えるのは、
正しい判断とは言えないでしょう。    

平均寿命は一つの例として紹介したものですが、
政府やマスコミ等が発表する数字を鵜呑みにすることは良いことではありません。
その数字が算出された方法を知っておく必要があるからです。
なんとなくの思い込みや、言葉のマジックから勝手にイメージして、
その数字の正しい意味も知らずに過ごすのは間違いの基です。
だって、数字の見せ方を錯覚させる手法は、詐欺師の常套手段でもあるのですから。
見せかけの数字に騙されず、正しい情報を読み取り、正確な判断をする。
その力をつけるためには、やはり教育が大切だと考えます。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』

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