「人工知能(AI)は、人間を……」筆者・青木勝美 更新日: 2023年10月30日
高校生のための進路ナビニュース
昔々、そのむかし、私が小学生のころのこと。
人間と電子計算機(当時コンピューターのことをこう称していた)が対決するテレビ番組があった。
そろばん名人と電子計算機とが計算の速さと正確性を競うものである。
そろばん組は小中高校生各1人の3人組。
対する電気計算機側は、白衣を着た研究者3~5人が電子計算機の周りを取り囲み物々しい雰囲気。
「京」桁の加減算(私にとっては、17桁は天文的な数字)。
電子計算機の準備も整い、「ヨーイ始め」いよいよ対決スタート。
数十秒経過、高校生のお兄さんが計算終了の手を上げる。
続いて中学生のお姉さんの手が、同時に電子計算機の研究者の手が上がる。
数秒後に小学生の女の子の手が上がり全員終了、答えも全員正解。
もちろん名人たちの勝ち、全国のそろばんを志す少年少女たちは、
留飲を下げたことだろう(私も含めて)。
あれから半世紀以上が経過し、機械の性能や情報処理技術の進歩は目覚ましいものがある。
私が高校教員になったころは、情報処理教育は草創期で、
大型の汎用コンピューター、入力はカードリーダを使用していた。
今、考えると非合理的な授業を展開していたが、
新しい技術に触れることは誇らしいことでもあった。
2000年代に入るとPCとともにインターネットが各家庭で普及し、
ようやく学校現場の授業においては1人1台のPC配置となった。
職員室にも各職員用に設置され、事務の効率化が図られた。
3年前のコロナ禍において、国は計画を前倒しして、
全国の児童生徒にノート型やタブレット型のPCを配布(貸与)し、
登校できない時期はオンラインでの授業を開始した。
また、プログラミング教育が小学校から始まっており、
学校現場におけるAIの活用法などの教員向け研修が夏休み中に開催されたことであろう。
先生方の苦労が推測される。
ChatGPTや生成AIは、深く考えなくとも、
短時間で答えを出すことのできる便利なツールであることは確かである。しかし、
人間と電子計算機の対決で「しょせん機械は人間には勝てない」と、
脳裏に刷り込まれてしまった私にとって、どこまでも懐疑心は捨てられない。
次回につづく
【プロフィール】
1983年4月より群馬県公立高校教員として勤務
学科主任、学年主任、保健主事、進路指導主事等歴任
2019年、平成30年度 専門高校就職指導研究協議会全国発表
2022年3月、群馬県公立高校教員完全定年(再雇用含む)
2022年4月より東日本教育事業部顧問として、
おもに就職関係の進路講演、面接指導等を各学校で行う