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「高卒求人・高卒就職支援シリーズ(11)これからの学校訪問は-貴重な機会を有効に-」筆者・小林英明

高校生のための進路ナビニュース

高校生の就職では企業による学校訪問は、
学校と企業の双方にとって情報交換の場として大切なものだ。
新型コロナウイルスの感染拡大により学校訪問にも厳しい時期があったが、
今年は感染状況が落ち着きを見せ、
高卒就職・採用活動もコロナ禍以前の状態に戻りつつあるようだ。

だが最近、学校訪問に関して気になる話を聞いた。
7月の求人活動解禁後の学校訪問が激増して学校が困っているという話である。
コロナ禍の訪問自粛中に新たに進路主任や就職担当になった先生方は、
それ以前の活発な学校訪問状況をご存じないから、とも言えるが、
以前の状況を経験している先生からも今年は極端に多くなった、という声も聞く。
一方でこの数年の間に教員の仕事は一層多忙になっているようだ。
7月の求人活動開始と重なる成績処理では「観点別評価」が加わり、
IT化が進んだとは言え、以前よりは手間がかかるようになった。
また、夏期休業中の教委によるeラーニング研修や出張研修も以前より増えたとも聞く。
そのためなのかお付き合いの長い少数の企業を除き訪問のアポ要請はお断りする、
直接の来校者は事務窓口で対応する、ということが起きているらしい。

私は講演の機会があると、教員に時間的余裕のない7月の学校訪問は
さまざまな点で難しい、と解説している。
かつて夏の学校訪問は各校の「近隣企業」や「常連企業」が中心だったが、
それでも7月から8月は訪問者が多かった。
そこにコロナ禍の採用手控えの反動や労働力不足の影響で採用活動が活発化し、
今年は学校訪問が急増したのだろうか。
私に入る情報は地域的に限られていることも多いので全国的な傾向ではないかもしれないが、
この時期の学校訪問が増加して限度を越え、さまざまなトラブル等が起きれば、
重要な情報交換の機会に影響が出ないとも限らない。
私は以前から学校訪問の分散化も提案している。
求人数、見学や選考の日程、選考方法等は7月にならなければ提供はできないが、
それ以外の情報は7月でなくても提供できる。
就職担当教員には求人情報以外にも企業情報、業界情報、新人育成情報等々、欲しい情報は多い。
学校が訪問を受け入れやすい時にそれらの情報を届けてはどうだろう。
押し寄せる訪問企業の波に紛れて忘れられたり、代理の教職員にしか会えなかったりするよりも
余裕のある時期に落ち着いて面会できるほうが情報提供、情報交換に役立つことは言うまでもない。
そのような訪問を継続して学校、教員と良い関係ができれば、
7月の求人情報は資料を求人票と同送でも十分伝わるだろうし、
逆に7月でも面会できる「選ばれた企業」になるチャンスもある。

最近は「進学校」に限らずより「上位」の大学への進学者増が期待される中、
就職者の指導や就職者のための情報収集にかける人も時間も減少しているようにも見える。
学校訪問以外にも就職希望生徒に、
採用担当者による多くの情報とチャンスを提供する支援はこれからますます重要になるだろう。

【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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