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「どうして虚数を勉強しないといけないの?」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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昭和の時代、職場で上司から「〇〇をやれ」と言われたら、意味なんて考えずに「やった」ものです。
ところが、最近の若者は理不尽なことが嫌いなので「なぜ、それをやるのか」をきちんと説明し、
納得した上でないと仕事はしない(納得した仕事に対しては、すごく頑張る)ようです。

高校で虚数を習ったときの話です。
当時、私は「二乗してマイナスになるなんてヘンなの」とは思ったのですが、
深く考えることなく「そういうものだ」と受け入れて勉強していました。
ところが、私とは違った反応をした二人の友達がいました。
一人は「どうして虚数を学ばなければならないのか」、
もう一人は「虚数を学んで得することはあるか」と、
虚数に対して根源的な疑問を持っていたのです。
これは虚数に限ったことではありません。
私と彼らのように、何かをする時には三種類の考え方をする人がいるのです。

(1)深く考えずに、やる人。
(2)やる意味を理解しないと、やれない人。
(3)自分にメリットがあることしか、やらない人。

昭和時代のほとんどの生徒は、しなければならないから勉強をしていました。
しかし、今の生徒たちの多くは新入社員の仕事ぶりと同様に、
(2)もしくは(3)といったモチベーションがなければ勉強しなくなっているようです。
ただし、ここで注意しなければならないのは、
(2)は「結果より、やる意義が大切」、(3)は「とにかく、得すること」と、
動機付けの方向性が反対になっていることです。
つまり「どうして勉強しないといけないの?」に対する答えには、
2種類ある((1)は論外)ということなのです。
だから、(2)の人に「結果から動機付け」をしようとしても、
(3)の人にいくら「意義」を説いても、やる気は起きません。
事程左様に、人によって「やる気」を出すためのモチベーションは違っているのです。

人にはたくさんの「やる気スイッチ」があります。しかし、
間違えたスイッチを押しても、やる気は起きません。
生徒のやる気を引き出すためには、
一人ひとりの生徒の個性をきちんと把握した上で指導しなければならないのです。
それが、今の教育に必要でしょう。

さて、虚数の話に戻ります。
私が考える答えは、(2)には「量子力学では、その基礎部分に虚数の考え方が含まれている。
だから、現実世界を説明するために虚数が必要」、
(3)には「数学から解なしなどの非整合がなくなり、数学が美しくなる。だから虚数が必要」です。
複素数平面を勉強するのは文系の生徒ではしないので……、
理系の人なら、きっとこれで納得してくれることでしょう。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
現在、日本SF作家クラブホームページにて『潜入捜査』が公開中。
日本SF作家クラブホームページ

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