進路ナビニュース

「人間はなぜ働くのか <続編>」筆者・青木勝美

高校生のための進路ナビニュース

「ラクな仕事はないですか?」と、2年生の男子生徒が進路室を訪ねてきた。
新型コロナの影響が色濃く残る3年前の5月中旬のこと。
「そんな仕事はない。真面目に考えなさい」と、いつもは一喝するところであるが、
この学年はコロナ禍の中で入学し、
翌日から長期休校、部活動の自粛、各種校内行事や対外試合の中止などがあった。
進路指導に関してもままならぬ状況であった。
来年度の進路指導が心配な学年であると思い直し、話を聞くことにした。

彼によると、「就職を考えていたが、就職した会社がコロナの影響で倒産するかもしれない。
とりあえず進学してコロナが過ぎるのを待ちたいと思う。しかし、
何を目標にして、就きたい職業も分からないまま、
どのような学校に進学したらいいのか見当がつかない」とのことであった。
同様な悩みを持ち、将来に暗澹たる気持ちを抱いている生徒が多数いることが想像できた。
現在、わが国の職業は17,000種類以上あると言われている。
その時代背景や技術革新によって衰退し消滅してしまう職業、
逆に持てはやされ隆盛する職業があることから、
働く意義や働く方法も時代とともに変化している。
現在は、労働に関する過去のさまざまな反省から「働き方改革」の関連法案の成立に至っている。
生徒へ労働環境の改善や福利厚生の充実などの情報を、
コロナ禍に隠れて十分伝えることができなかったことは、忸怩たる思いである。

ちなみに、高校生のなりたい職業のベスト3は、
1位公務員、2位教師、3位SE・プログラマーとなっている。
どれも資格を取得し、狭き門の試験を突破しなければならない。
「ラクな仕事」とは言えないが、堅実に考えているようだ。
前述の男子生徒に「ラクな仕事は何だと思う。やりたい仕事はないのか」と問うと、
「YouTuberかな」との答え、その目標に向かって頑張れとは言えなかったが、
固定観念にとらわれず、自分自身にあった仕事と働き方を探してほしいとアドバイスした。
さらに、働いてみて、その仕事に夢中になれたら、それが一番「楽な仕事」であり、
「なぜ働くのか」の意味も徐々に理解できると付け加えて……。

【プロフィール】
1983年4月より群馬県公立高校教員として勤務
学科主任、学年主任、保健主事、進路指導主事等歴任
2019年、平成30年度 専門高校就職指導研究協議会全国発表
2022年3月、群馬県公立高校教員完全定年(再雇用含む)
2022年4月より東日本教育事業部顧問として、
おもに就職関係の進路講演、面接指導等を各学校で行う

TOP