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「たとえ世界が明日滅びるとしても」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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宗教改革で有名なマルティン・ルターに
「Even if I knew that tomorrow the world would go to pieces, I would still plant my apple tree.
(たとえ世界が明日滅びるとしても、私は、リンゴの木を植え続ける)」
という言葉があります。
でも、なぜ「世界が滅びることが分かっている」のに
「リンゴを植える」という無意味なことをするのでしょうか。

この言葉をどう受け止めるかは人によってさまざまですが、
その答えとして「リンゴを植えること自体が私にとって喜びなのだから、
世界が滅びようがどうしようが、そんなの関係ない。
私は自分の喜びのために、今、自分のできることをするんだ」、
すなわち「今、自分にできることを精一杯やっていこう」と解釈をされることが多いようです。
しかしルターは、もっと違うことを伝えたかったんだと思います。
というのも、彼はカトリック世界に大きな影響を与えた人物なので、
本当に自分が死んでしまう(抹殺される)ことを想定していたと思われるからです。
そして、それを暗示しているのがリンゴです。というのも、
リンゴはアダムとイヴの話で有名な「禁断の実」なのですから。
そんなリンゴの木を植え続けるんですよ。
つまり、この言葉は「腐敗しきった教会が自分に対してどんな迫害をしてこようとも、
私は自分の考えを貫いて後世を導いていく」 という決意の表れだったに違いありません。
「無意味なことをする」どころか「とても重大なこと」、
まさに「身命を賭す覚悟」を表明する言葉だったのです。
確かに一般的な解釈のような、
「自分の喜びのため」「今を精一杯生きる」でもいいのですが……。

「リンゴの木を植え続けるくらいの強さ」イコール、
自身の志の実現に向けて「勉強に、仕事に、そして人生に臨む強さ」を
身に付けることが大切なのではないでしょうか。
そして、激動の21世紀に立ち向かっていくためにも、
「その強さを育てる教育」が、今、最も重要であると考えます。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
星新一公式サイト・寄せ書きに「星先生の発想法」が掲載されました。
星新一公式サイト「星先生の発想法」

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