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「強く生きる力」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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「ぼくたちは水泳にたとえれば、毎日プールで猛練習している強化合宿の選手なんです。
プールの中で泳げば次々世界新記録が生まれる。
だけど、いったん川や海へ出れば、さっぱり泳げない」
これは2000年頃に将棋の森下卓九段(当時八段)がインタビューに答えた言葉なのですが、
「川や海の荒波を知らないスイマーには、それに打ち勝つ強さがない」なんて、
何となく今の受験生にも当てはまるように思います。
「塾や予備校で難関大学合格を勝ち取る力をつけてもらっても、
社会の荒波の中では太刀打ちできない」って。

羽生善治九段がデビュー当時、雑誌のインタビューで
「少年時代は、羽生さんも師匠の家で、拭き掃除をしたり、師匠の肩を揉んだり、
そういう苦労をされましたか」と訊かれ、
「そういう苦労はしておりません。もしそういうことをさせられていたら、
将棋をやめていたでしょう」と答えています。
これも、今どきの感覚だと思います。20年以上も前に、当時の若者が
「技術さえ高めれば、それ以外のことをする必要はないでしょ」
と思っていたことは興味深いことです。「今の若者と変わらない」って。
ただ、羽生九段は人格者であることに間違いありません。
我々凡人に分かるはずもありませんが、おそらく数多くのタイトルを獲得し、
超一流の人々と切磋琢磨しあってきたことによって、
精神的にも社会的にも力強く成長されたのでしょう。
これは、「タイトルをとる(もしくは難関大学に合格する) ことは決してゴールではなく、
それから後も、それまで以上に努力し成長し続けなければならない」
ということを物語っているように思います。

ただ、自分の目指した道を上り詰めるためには、
多くの人の力(その一つが学校)を借りなければなりません。
決して「自分一人で頑張るだけで最良の結果に手が届く」ものではなく、
さまざまな支援を受けることによって目標をクリアする力をつけることができるようになるのです。
そして、そういう力をつけることが豊かな人生を歩むための第一歩であり、
その上に立って「社会の中でさらに強く生きる力」を磨くことが大切になるのです。
学校教育において「学力を高める」ことは大切です。しかし、それだけではなく、
「強く生きる力」を生み出す、その礎を築くことも忘れてはならないことだと考えます。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
星新一公式サイト・寄せ書きに「星先生の発想法」が掲載されました。
星新一公式サイト「星先生の発想法」

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