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「修学支援新制度の調査に関する公開研究会から」筆者・桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之

高校生のための進路ナビニュース

5月19日に日本私立大学協会附置私学高等教育研究所の公開研究会があり、
同研究所が実施した修学支援新制度の調査結果を報告するとともに、
今後のあり方について議論が行われた。

基調報告の白川優治千葉大学准教授は、この調査で新制度の成績要件によって、
受給資格を喪失した学生が増加していることや
大学の事務負担が重くなったことなどを明らかにした。
また、各高等教育機関の新制度の確認申請書の記載データを独自に分析し、
公表義務がある記載事項について、私立大学は76.3%が公表しているのに対して、
公立大学では45.3%と半数以下しか公表していないことを示した。
さらに、国立の専門学校では17.9%しか公表していない。
こうした情報公開の不十分さが、
生徒や保護者の情報ギャップに直接繋がるわけではないが、
情報公開に対する消極性が情報ギャップと同根の問題であると感じた。

私自身は、これまでこのメールマガジンで訴えてきた、
新制度の問題点や情報ギャップに対する対応などについて、
危惧された事態が起きていることが調査で明らかになったと報告した。
今後の方向性について、司会者から問われ、
これも従来の主張である授業料後払い制度の導入について説明したが、
時間の制約もあり、新制度の見直しとの関連について、
わかりにくく不十分な説明となった。
制度の複雑さが原因とはいえ、説明することの難しさを感じた。
高校や生徒・保護者などの情報ギャップの解消が
いかに困難な課題か痛感することになった研究会だった。

【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。

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