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「高卒求人・高卒就職支援シリーズ(9)服装指導あれこれ―進路指導と生活指導―」筆者・小林英明

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服装指導と言えば、普通は生活指導部が担当する。しかし、
進路指導部にとっても面接対策等の一環として服装指導は大切である。
そもそも生活指導部の服装指導と進路指導部の服装指導とは目的が大きく違う。
私の現役時代の勤務校では、
生活指導が他校同様に登下校時を含む「学校生活の日常の服装」を対象とするのに対し、
進路指導ではあくまでも「進路活動時の服装」を対象として、
「礼装」や「勝負服」のようにとらえて指導していた。
生活指導でも儀式的行事では生徒に「正装」を求めていたが、
進路指導部では進学者も面接がある推薦受験か当時のAO受験が多かったため、
「正装」よりもさらに細かい進路活動用の基準を作った。

「進路スタイル」と名付けたその基準は生活指導上の「正装」をさらに徹底し、
シャツ、靴、靴下、ベルト等にも推奨基準を作り、
髪型にも「清潔感」に加えて「表情が見えること」を求めた。
3年生の校内進路行事では担任団の協力も得て、
実施予告時に「進路スタイルで参加のこと」という連絡を出し、当日は「服装チェック」をした。
「進路スタイル」は規則ではないので「違反者指導」はしないが、不完全な個所は厳しく「指摘」する。
そして生徒達には「内定、合格を得るためには服装に限らず、
できることはすべてやる。できないことも努力する」と言い続けた。
当初は多少の混乱もあったが次第に定着し、
3学年の進路指導行事、特に就職関連行事の会場周辺は普段と異なる雰囲気が漂うようになった。
「形から入る」という言葉があるが、
この服装をすると就活スイッチが入る生徒が増えてきたことは確かだった。

ある年、採用選考後に受験報告書を持ってきた生徒が、
「面接会場には自分ほどきちんとした服装の人はいなかった。何だか安心できて落ち着けたし、
こいつらには絶対に負けないという自信が湧いて気合が入った」と言った。
もしも逆の立場だったら、
この生徒は他校生の服装を見て不安を感じ、自信を持てずに面接に臨んだかもしれない。
進路指導部の服装指導の成果を見た気持ちがした。

この「進路スタイル」に関しては進路指導部として少し困ったことも起きた。
新たに着任した校長から、3年生の進路行事の服装がとても良いので、
生活指導部と協力して「進路スタイル」を全校に広げられないか、という打診があったのだ。
私は即座に断った。「進路スタイル」が「成功」しているとすれば、
それは「非日常」であり、進路活動の重要性の象徴だからである。
全体に拡大してしまっては進路活動時の「勝負服」の意味もなくなってしまう。
このような説明をして校長には納得していただいた。
高校生にとって面接時の服装は面接官に「良い印象」をもっていただくだけでなく、
生徒自身がその時に最高のパフォーマンスを発揮できる、
心理的条件も整える服装であることが大切だと思う。

【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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