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「古典の勉強」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

高校生のための進路ナビニュース

「英語と違って、使うこともない古典を勉強する意味が分からない」
これは、受験生が口にすることが多い疑問ですが……。
彼らは、どうしてそう思うのでしょう。
これは古典に限ったことではありません。
なぜなら、小中学校での勉強と高校の勉強は意味が違うからです。というのも、
小中学校では「日常生活ができる能力をつける勉強」をするのに対して、
高校では「日常生活に必要のない勉強」をするからです。
えっ、と思われる方もおられるでしょうが、
中学校まできちんと勉強していれば何でもできます。
日常生活で不自由することはありません。
それに比べて、例えば高校で習う微分積分やベンゼン環なんて、
日常生活で使うことはありません。
つまり「高校の勉強をしなくても、生活するのに困ることはない」ということなのです。
では、なぜそんな勉強をするのかというと
(大学で詳しく研究する分野を見つけるために
高校では全ての科目を勉強する、という意味もなくはないのですが……)、
それは幸せな人生を送るためです。

高校では、いろいろな分野を勉強します。
そして、いろいろな分野を学ぶことによって、
知識が複合的になり、多角的な視野を持つようになります。
すると、さまざまな方向から考える、柔軟な思考力を身に付けることができます。
これからの時代、間違いなく社会は複雑化しさまざまな問題が発生するでしょう。
そのとき、一方向からだけの視点で判断すると、
往々にして間違った方向に進んでしまいます。しかし、多角的な視野をもつ人は、
正しい判断をすることができるので、失敗することが少なくなります。
すなわち、楽しい人生、幸せな生活を送ることができるようになるのです。
ちなみに、私が考える子供と大人の違いは、
「感情のままに動くのが子供、情理を尽くすのが大人」です。
そして情理をわきまえるために必要なのが、高校で培う複合的な知識なのです。

おそらく近い将来に、自動翻訳機が普及するでしょうから、
英語に限らずどこの国の言葉でも理解できるようになります。
つまり、英語を話すことに価値があるのではなく、話す内容が大切になるということです。
さて、ここで改めて古典を勉強する意味を説明します。
それは、国際化に対応するためです。というのも、
自国の言葉や歴史を知らないと、世界から笑われてしまいますから。
国際社会の常識では、自分の国のルーツやアイデンティティを知っているのが当たり前です。
だから、他国の人から日本のことを聞かれたときに答えられないと、恥をかきます。
国際的な観点に立つと、
「自国の古典も歴史も知らないなんて、ありえないこと」なのです。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
星新一公式サイト・寄せ書きに「星先生の発想法」が掲載されました。
星新一公式サイト「星先生の発想法」

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