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「高卒求人・高卒就職支援シリーズ(8)高卒就活、すべては求人票から」筆者・小林英明

高校生のための進路ナビニュース

3月は大卒採用、大卒就活が本格的にスタートするが、
2か月後の5月になると各職業安定所で高卒採用説明会が開かれて、
高卒採用、高卒就活の準備が始まる。
近年はコロナ禍の影響で中止やリモート実施が続いたが、
今年は対面実施復活があるかもしれない。
かつて管轄職安のこの会で高校側からの状況説明や、
教員の立場からの要望等をお話しする機会が何度かあった。
その時に担当者から、
「職安の立場では法的に間違いのない求人票の作り方の解説が中心で、
生徒さんや先生方の要望に応える求人票の作り方までは手が回りません。
その辺もお願いします」というお話をいただいた。

数多くの求人票の中には十分な情報を簡潔に分かりやすく記載した求人票もあれば、
残念ながらそうとは言えない求人票もある。
だいぶ昔だが仕事の内容欄に
「店舗において当社の製品を販売していただきます」
としか記載のない販売職の求人票を見た。
極端な例だがこれでは仕事の内容は高校生に伝わらない。
高校生の多くは「販売」と言えば商品を包装して客に渡し、
代金を受け取ることくらいしか思い浮かばないだろう。
「そのくらいの仕事ならできる」と思えば職場見学に進むこともあるが、
「そんな単純な仕事ではつまらない」と感じる積極的な生徒はこの求人票をスルーしそうだ。
また、アルバイト中に正社員の仕事を観察したり、
学校の指導で販売職の業務範囲の広さを学んだりした生徒は、
「この求人票は仕事内容を明確に示していないし将来も分からない」
という不信感さえ持ちかねない。

多くの企業で正社員販売職はいわゆる接客の他にも、
ディスプレイやポップ制作、商品管理や発注、
時にはバイト店員の管理や指導、顧客情報の管理まで、
店舗にかかわるさまざまな業務を経験に応じて担当している。
ところが求人票作成となると「販売職とは当然そういう仕事を含めた職種」という、
「あたりまえ意識」のために前述のような表現になってしまうのではないだろうか。

同様の現象は販売に限らずさまざまな職種で見られる。
仕事の詳細はパンフレットに書いたし見学の時に説明できる、
とも言えるが求人票段階で素通りでは説明の機会までたどり着けない。
高校生の就活期間は実質的にはかなり短いため、見学企業数も絞り込む。
多くの高校では同じ条件での比較ができるようにまず求人票から企業情報収集を始める。
就活の入口である求人票で心をつかまないと、
パンフレットやホームページまで進まず、職場見学にもつながらない。

生徒は制限字数やスペースをいかに有効に使って自己をアピールするか苦心しながら、
試験対策の作文練習や履歴書の志望動機欄作成に努力している。
求人票の仕事の内容欄は制限字数300字。
生徒の努力に応えて仕事内容もアピールしていただきたいと思う。

【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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