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「相手に伝わる話し方」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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なにげなく話をしていると、
相手の人から「えっ、何だって」と問い返されることがあります。
そうかと思うと、自分の話した意図とは違うとらえ方をされ、
思わず「違うちがう、そういう意味ではなくて」と言わなければならないことも。
自分ではきちんと話しているつもりでも、うまく伝わっていないことがあるようです。
しかし、それは聞き手が悪いのではありません、自分の話し方が悪いのです。

六代目笑福亭松鶴には、「ある宴会の席に呼ばれたとき
(酒を飲んで騒いでいるので、普通誰も噺なんか聴かない)に
『らくだ』を演じはじめたところ、
騒いでいた客たちが次第に松鶴のほうに集まってきた」、
そんな逸話があります。それがプロなのです。

このことは、授業においても同じです。
教える側は、当然のことながらその内容を熟知しているので、
往々にして「教えられる側が分からない」ということを失念してしまいます。
そのため、「なんで分からないのか」が分からず、
「これを覚えておけば分かるはずだ」「授業をきちんと聴いていれば分かるんだ」と、
一方的な授業をしてしまうこともありがちです。
でも、そんな授業を聴いて理解しようと努力することは、
参考書を読んで理解するのと同じこと、
いや、もしかすると参考書のほうが分かりやすく説明してあるかもしれません。
授業で大切なのは「話した」「伝えた」ではなく「相手に伝わったか」であり、
どのような「伝えるための努力をしたか」なのです。

ちなみに、授業とは
「その時間内にきちんと学習すれば学力がつく」というものではありません。
授業の中で「学ぶことの楽しさ」を感じさせることによって、
「もっと勉強したい」という知識欲を高めるきっかけとなるべきものなのです。
なぜならeducationの語源はラテン語の
「educare:子どもの資質を引き出す行為、養い育てる」ですから。
つまり、一方的に「教え育む」だけの授業は不十分で、
「教えることで引き出す」を常に意識した授業をすべきだからです。
難しい話を、その内容レベルを下げることなく、
分かりやすく話して理解させ、さらにもっと興味を持たせる、それがプロの授業です。

繰り返します。うまく伝わらないのは聞き手が悪いのではなく、
自分の話し方が十分でない証拠なのです。
そのことを常に意識し、注意して話したいものです。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
星新一公式サイト・寄せ書きに「星先生の発想法」が掲載されました。
星新一公式サイト「星先生の発想法」

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