進路ナビニュース

「高卒求人・高卒就職支援シリーズ(7)出すか出さぬか年賀状?」筆者・小林英明

高校生のための進路ナビニュース

かつての在職校では年内に内定をいただいた生徒に、
内定先(採用担当者か担当部署)へ年賀状を出す指導をしていた。
きっかけは生徒が内定先に自己と学校をアピールする一助に、と考えた校長の提案だが、
私は後述するもう一つの効果も考えて提案に賛成した。

この「習慣」が定着して数年、二人の女子生徒が同じ会社から内定をいただいた。
12月を迎え、例年通りに内定生徒達に担任を通して、
年賀はがきと説明プリントを配布すると、
この二人が相次いで「相談」にやってきた。
最初に来た生徒(A子)は、会社説明会で、
社員間での年賀状のやり取りは自粛することになっていると聞いたので、
まだ内定段階ではあるが4月には社員になる立場なので、
社内ルールに沿って出すことは控えたいと言ってきた。
そして、もう一人の内定者(B子)と話をしたが彼女は出すと言っている。
彼女の判断はそれで良いと思うが、同じ高校で対応が違っても良いだろうかとも言った。

あとから来たB子の話は、A子は社内ルールがあるので出さないと言っているが、
入社したら出せないので選考時にお世話になった人に
最初で最後だから出しておきたい。しかし、
自分だけ出して同じ高校のA子が出していないと、
彼女の印象が悪くならないか気になる、という内容だった。
「義理と人情」とでも言おうか、
内定の身であっても社内のルールを守りたい生徒、
入社すればルールに従わねばならないからその前に挨拶をしておきたい生徒、
どちらも私にとってはうれしい対応だった。
もちろん私は二人に対し、どちらも正しい判断だから自分の思うとおりにしなさいと答えた。

さて、ここで冒頭に触れた「もう一つの効果」だが、
それは入社前に内定生徒が会社(人事担当者)と、
コミュニケーションの機会を作れることだった。
高卒採用にはさまざまな制約があるため、入社前の内定者との接触を控える会社が多い。
それでも一部の内定先からは、
年末にクリスマスカードや会社のカレンダーが生徒宛に送られてくることもあれば、
社内報や業界紙が内定生徒用として届くこともある。
時には入社前に覚えておくと便利な業界用語や商品名等の学習資料もある。
そしてこれらを受け取った生徒に共通するのは、その嬉しそうな表情である。
会社が自分を気にかけていることを実感できるからだ。
会社からの接触がない生徒の中にはそれを見て、
自分の内定先からは何も来ないが大丈夫だろうかと心配する者もいる。

そこで接触を待つのではなく、
こちらから接触を試みようというのが「年賀状作戦」だった。
そのため、年賀の挨拶だけではなく、
近況報告や入社への期待なども書き添えるように指導した。
内定者、しかも高校生からこのような年賀状が届けば
担当者も返事を出したくなるのではないか、という目論見だ。
生徒に返事の有無を報告することは求めてはいなかったが、
3学期が始まって、「年賀状の返事をいただきました」と報告に来る生徒もいた。
返事をもらえたことが嬉しかったのだろう。

【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

TOP