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「メインストリームから外れた者へのキャリア支援」筆者・児美川孝一郎

高校生のための進路ナビニュース

先日、2年生のゼミでは、不登校が話題になった。
すると、実は自分自身も学校時代に不登校の経験がある、
と言い出す学生が3人も(たまたま全員女子)出てきた。
10人ほどの集団でのことなので、正直ちょっと驚いた。
とはいえ、彼女たちは、今では普通に通学制の大学に通い、
講義もゼミもアルバイトもこなす学生生活を享受している。
他の学生たちと、何ら変わるところはない。
だから、不登校経験の有無、一定の期間学校に通わない時期があったかといったことは、
その後を考えれば、まったくこだわる必要などないことにも思える。

ただ、彼女たちの話に耳を傾けていて、はっとさせられたことがある。
それは、不登校期間には、
およそ進路やキャリアについての支援を受ける機会がなかったということだ。
それだけではなく、受験においては明らかに不利な状況に置かれていた。
そう考えると、筆者の目の前にいる不登校経験の学生たちは、
(本人や保護者の努力によって)運よく大学までの道がつながった者たちである。
しかし、そうではなく、不登校経験を経たあとの進路選びや
キャリア形成に困難を抱えたという者も、
それなりの割合で存在しているにちがいない。

日本社会においては、学校や企業といった組織に属している者には、
進路やキャリアに関するそれなりの支援が組織的になされる。しかし、
いったん組織の外に出てしまうと、途端にそうした支援は届けられなくなる。
それは、高校や大学の中退者、
企業からの離職者のことを思い浮かべれば、容易に理解できよう。
ただ、より正確に言い直せば、組織に属している者であっても、
メインストリームから外れた者には、キャリア支援の手は差しのべられないのである。
大学に引き寄せて言えば、不適応のゆえに留年を繰り返すような学生、
そもそも進路希望を持たずに卒業だけはしてしまいそうな学生などは、
通常のキャリア支援の網の目からはこぼれてしまっている。

はたして、これでよいのだろうか。

【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。

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