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「何か質問はありませんか」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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研究会や勉強会に参加すると、最後に、「何か質問はありませんか」と聞かれます。
ところが、ほとんどの会では質問は出ないものです。
とても素晴らしい講演だったので、参加者全員が「完璧にその内容を理解」し、
しかも「100%賛同している」から質問が出ないのでしょうか。
いえいえ、決してそんなことはないでしょう。
おそらく、その反対だと思います。

それが証拠に、たまに出てくる質問も「話の本筋ではない枝葉の部分」や
「ちょっとした言葉の言い間違え」に対して発言される程度で、
全体として話をとらえた上での質問なんて出てきません。
もしかすると、ほとんどの人が話の本質を理解していないのかもしれません。
というのも、一般的に人は自分と異なる意見に耳を傾けようとしないものだからです。
どんな話を聞いたところで、「自分に都合のいい部分」だけしか頭に残らず、
自分勝手にそれをつなぎ合わせて、自分なりの解釈をしてしまう。
だから、話の本質に迫る質問ができないのです。

異なる考え方をする人と話をするときには、
相手の話をきちんと聴いた上で話さないと、こじれてしまいます。
違う意見の人と話をするときには、誤りなく相手の言い分を理解した上で、
対話をスタートしなければならないのです。
それなのに、今では自分の言いたいことばかり、
相手の言い分など「聞く耳を持たない」し、
初めから「持つつもりもない」、そんな人が増えてしまいました。

おそらく「相手の言うことをじっくりと聴く」、
という訓練がなされていないのでしょう。
そんなことでは、「話し合い」なんてできるはずがありません。
「話がまとまる」わけもありません。
日本語は最後に結論を述べる構造となっています。
そのため、最後まで話を聴かないと理解することはできないのです。
だからこそ、昔はきちんと話を聴く習慣を身につけ、そして互いに理解しあっていました。
日本は言葉を大切にする、
まさに「言霊の幸ふ国(ことだまのさきわうくに)」だったのです。

最近では、国内外でのグローバル化に備えるため、英語の4技能が求められています。
確かに素晴らしい取り組みですが……。
コミュニケーションの基本は、「相手を理解すること」です。
4技能は英語に限ったことではありません。
英語も大切ですが、私は日本語において「聴く・話す」を大切にすべきだと考えます。
さて、何か質問はありませんか。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
『ショートショートの宝箱』

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