「少子化・人口減少下の高校統廃合と教育格差(その3)」筆者・葉養正明 更新日: 2023年1月31日
高校生のための進路ナビニュース
これまで2回にわたり、少子化・人口減少下の
高校統廃合をテーマにその動向や課題に触れてきた。
一条校を数えても約50000校に達する日本の学校は、
それぞれが一定数の子どもを受け入れ成り立っている。
受け入れる子ども数は一定水準であるべきだ(学校の適正規模)、
という観念からすれば、少子化・人口減少の時代は
学校統廃合の時代ということになる。
その1で触れたように、わが国は中長期的に少子高齢化に直面しているからである。
この1月に通常国会が始まり、来年度予算案を巡る喧々諤々の論議が伝えられる。
国防予算を向こう5年間で43兆円とする、
という閣議決定が昨年末に公になり、
加えて少子化・人口減少に対応するための予算倍増が打ち出されたためである。
原資をどこに求めるか。増税によるのか、国債によるのか。
決着にはなお紆余曲折が予想される。
では、未来の納税者である学生たちは、
少子化対策を含む増税論や国債論(借金の先送り)、
あるいは、教育格差についてどう考えているか。
この点を知るため、筆者は担当大学学生に簡単なアンケート実施を依頼した。
以下は、質問内容と結果を示す。
<調査内容と結果>
アンケートは選択肢方式で実施。
無償化の項目を設け、第1位から第3位まで順位づけ答えることを求めている。
加えて、支出見直しで増税をしない、に対する意見も求めている。
選択順位を無視し項目ごとにグラフにまとめると、
選択の多い順に、(1)高校授業料の無償化、
(4)親の所得状況に対応した、大学進学のための返済免除の奨学金導入、
(9)予算支出の見直しを行い、増税は導入せず無償化を進める、となる。
なお、選択肢は以下のようである。
(1)高校授業料の無償化
(2)大学授業料の無償化
(3)通塾のための授業料の無償化
(4)親の所得状況に対応した、大学進学のための返済免除の奨学金導入
(5)離島やへき地等の子どもにも質の高い教育を
提供するための遠隔教育(ICTや通信教育)利用費の無償化
(6)公立高校入試の廃止(生徒の希望で公立高校を選択する)、
(7)都道府県単位に高校修了試験制度を創設し、
高校修了を認定された生徒は大学入学資格を付与する制度の導入、
(8)その他(具体的に書き込んでください)
(9)増税は避け、これまでの政府支出を見直し、「教育無償化」を進める
高校授業料の無償化、親の所得に応じた返済免除の奨学金導入、
原資は増税によらない、などの教育格差忌避に支持が集まっていることが分かる。
【プロフィール】
教育政策論、教育社会学専攻。
大学教員として46年間過ごし、現在は東京学芸大名誉教授、
国立教育政策研究所名誉所員、埼玉学園大学大学院客員教授。
社会変動の中の「学校と地域社会」を主テーマに研究を進めると同時に、
国や地方の各種審議機関の委員等もつとめてきた。
単著は、『人口減少社会の公立小中学校の設計
―東日本大震災からの教育復興の技術』(協同出版)
『米国の学校の自律性の研究』(多賀出版)など。