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「少子化・人口減少下の高校統廃合と教育格差(その2)」筆者・葉養正明

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前回(その1)は、少子高齢化や人口減少の推移(推計)を見てきた。
過去20年ほどの全国各地の高校再編政策は、
「学校の適正規模」を維持することを動機にしながら、
中高一貫校設置などの開発型の高校づくりを基本としてきた。
高校生の中長期的減少傾向のもとでは、
「適正規模」維持という政策は高校統廃合に帰結する。
その結末は高校配置密度の低下である。
離島やへき地、中山間地では、軒並み生徒の通学距離の拡大に見舞われ、
住所地の近くに高校が配置されない自治体が広がることになる。
義務教育学校設置や中高一貫校設置などを抱き合わせにしていることもあるが、
学校再編政策の根底には小さな学校の解消という動機が潜んでいることが多い。

小論は、「教育格差」問題と絡めながら、高校統廃合について考えようとしているが、
では、学校の閉鎖、あるいは、学校統廃合はどのような効果を伴うか。
この問題を考えるに当たり、
UNESCOがCOVID-19に伴う「学校閉鎖」の「懸念」として、
指摘する項目を振り返ってみよう。

(1)学習の中断
 子どもの成長発達の機会の剥奪、
 それは、不利益な環境にある子どもほど大きくなる。
(2)栄養
 学校給食がなくなり、適切な栄養の保障がおろそかになる。
(3)保護者は遠隔教育やホームスクーリングに慣れていない
 家庭での子どもの学習手当が親に求められるが、
 それに慣れていない家庭での子どもの学習機会の不平等。
(4)デジタルな学習への機会の不平等
 インターネット環境への家庭間格差による学習の阻害。
(5)子ども保育における家庭間の格差
 働き続ける家庭では、学校閉鎖になると子どもが取り残される可能性があり、
 問題行動などに導かれる懸念も生ずる。
(6)経済的コストの高さ
 学校が閉鎖された際に就業ができなくなることによる経済的な負担の増大。
(7)健康や介護システムへの意図せざる負担
 学校が閉鎖された際に子どもの養育への負担が女性に重くのしかかり、
 (女性が担いがちな)介護領域における医療分野の専門家の負担の増大。
(8)開校している学校や学校システムへの負担の増大
 開校している学校と閉鎖した学校とが共存することで、
 開校している学校には過度の負担を及ぼす。
(9)学校閉鎖が長期化した際の学校再開時での不登校率の増大
(10)学校閉鎖による子どもの社会的孤立
 学校は社会活動や人々の間の交流のためのハブであり、
 学校閉鎖で子どもたちは、学習や成長に不可欠な社会的結びつきを失う。

UNESCOの指摘は、
地域社会から恒久的に学校を閉鎖する「学校統廃合」の
「格差」問題を考えるに際しての重要な視点を提供している。

【プロフィール】
教育政策論、教育社会学専攻。
大学教員として46年間過ごし、現在は東京学芸大名誉教授、
国立教育政策研究所名誉所員、埼玉学園大学大学院客員教授。
少子化・人口減少、大震災や戦乱などの社会変動のもとにおける
学校システムのあり方などを主テーマにしている。
近刊論文は、「東日本大震災における宮古市の子どもの生活
・学習環境意識の変化とレジリエンス―縦断調査を通して」
(『災害文化研究』第6号、2022年5月)。
単著は、『人口減少社会の公立小中学校の設計
―東日本大震災からの教育復興の技術』(協同出版)など。

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