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「専門職採用における日本的構造」筆者・法政大学キャリアデザイン学部教授 児美川孝一郎

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先日、長く県立高校の校長を務め、
県の教員採用試験にも面接委員等として関与してきた先生と
懇談する機会を得た。
話題は、現在の学校現場をめぐる状況であったが、
こちらが大学で教員養成に携わっていることもあって、
最近の若手の教員の様子や教員採用試験のことにも及んだ。

興味津々にお聞きしたのは、教員採用の一次試験は、
教職の専門性や教科についての筆記試験のため、採点基準は明確であるとして、
二次試験(とりわけ面接)では、何を重視して見ているのかという点である。
答えは明快であり、ますます前のめりになってしまった。
「一次を通過しているのだから、教科の学力とか指導力とか、
そのへんはあまり気にしませんね。むしろ、コミュニケーション能力です」

このあと、今どきの学校現場でうまくやっていくために、
なぜコミュ力が必要なのかについての説明が続き、
最後には驚くべき言葉が発せられた。
「自分も校長をやっているからわかりますけど、
最後の決め手は、来年4月に、
この人といっしょに働きたいなと思うかどうかですよ」

のけ反りそうになりながら、考えてしまった。
コミュ力にしても、「この人と働きたいかどうか」にしても、
これらは、民間企業の人事の方々が言うこととまったく変わらない。
教師は、れっきとした専門職である。
しかし、専門職としての能力のみを基準として
「ジョブ型」で採用されるわけではないらしい。
一次試験のラインであれば、そこは専門能力で測られるが、
最終的には、日本的な「メンバーシップ型」の採用がなされているのだ。
だから、教員採用試験の担当者も企業の人事も、
まったく同じことを言うのである。

現在、企業における「メンバーシップ型」の採用・雇用は、
見直しの機運にあり、徐々に(部分的に)ではあれ、
「ジョブ型」に移行していくのがトレンドにあるかのように言われる。
そのことは、学生たちの耳にも届いているはずだ。
しかし、専門職でさえ「ジョブ型」の採用など徹底できないのに、
民間企業において、そんな転換が本当に可能なのだろうか。
学生をミスリードしてしまわないためにも、いぶかしんでしまう。

【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。

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