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「褒めて育てる」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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「怒るは自分のため、叱るは相手のため」という言葉があります。
これは、怒るは
「自分が不愉快であるということを相手に伝えたい」
ために起こすことであるのに対し、
叱るは
「相手の間違った、あるいは望ましくない行動に対して、
今後の成長のためにアドバイスをする」
ために行うことを示している言葉です。
つまり、「相手の行動改善のきっかけを作り、同じ過ちを繰り返さない」
ようにするため、それが「叱る」の目的なのです。

しかし、叱り方にも善し悪しがあります。
中国・明代の思想家の呂坤(りょこん)は、その著書『呻吟語(しんぎんご)』の中に
「叱る側が犯してはならない六戒」を記しています。
(1)其の忌むる所を指摘することなかれ。
(2)ことごとく其の失う所を数うることなかれ。
(3)人に対することなかれ。(対する:比べること)
(4)峭直(しょうちょく)なることなかれ。(峭直:非常に厳しいこと)
(5)長く言うことなかれ。
(6)かさねて言うことなかれ。

なるほど。500年以上も前に書かれているにもかかわらず、
今なお実感することばかりです。
なぜなら、きちんとできない生徒たちを見ていると、
どうしても口出ししたくなってしまうのです。
だから、どうしても「くどくどしい叱責」をしてしまいがちになります。
ただし、ネチネチとした叱責をしてしまう原因の多くは、「怒る」の感情からです。
「自分が不愉快だから、それを解消するため」に言っているに過ぎないからです。
そこで、そうならないためにこの六戒が提唱されたのではないでしょうか。
 
そうかと思うと、逆に「私は生徒を叱ったことがない」という先生がいたりもします。
ですが、そんな先生に限って、本当は、
「叱らなければならない場面なのに、スルーしている」だけなのかもしれません。
それはそれで、とても情けないことです。

さて、最近は「褒めて育てる」ということが言われています。
しかし、どんなことでも褒めればいいというわけではありません。
的外れな褒め方をすると、逆効果になってしますから。
つまり「褒めるべきときに褒める」ことが大切なのです。

ここで改めて『呻吟語』の六戒を見てみると、
「叱ってはいけない」とは言っていないことが分かります。
つまり「叱るべきときにはしっかりと叱る」、
「的を射た内容を、ピンポイントで叱る」必要がある、ということなのです。
そのためには、叱るべきときを
「しっかりと見定めて叱る」ことが大切なのです。
しっかりと見定める。
そう。ここで初めて「褒めて育てる」教育が実を結ぶことになります。
なぜなら、きちんと叱ることができるくらい
しっかりとした人間関係を作ることができれば、
きちんと褒めることもできるようになるのですから。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
『ショートショートの宝箱』

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