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「高卒求人・高卒就職支援シリーズ(4)採否通知さまざま(前編)―好印象の不採用通知―」筆者・小林英明

高校生のための進路ナビニュース

高卒就職の採用選考では、
選考を行い、採否通知を出す採用担当者も、
それを受け取り生徒に伝える指導教員も
いろいろと気を遣う仕事が増える。

高卒就職では採否結果を「学校経由」で生徒本人に伝えるため、
採否の連絡・通知は、担当教員が最初に接する。
内定通知を受け取れば嬉しく思うし、先方に対して感謝の気持も湧き、
それが企業に対する好印象につながるのは当然とも言える。

しかし、不採用通知を受け取っても採用通知と同じように、
あるいはそれ以上に良い印象を持ち、
翌年以降も生徒に紹介しようと思う企業に出会うことがある。
それは不採用という結果を出しながらも高校生を大切に考えてくださる企業である。
そのような企業なら採用された生徒は、大切に育ててもらえるに違いない。
今回はそのような事例を紹介しよう。

A社は電話で第一報を入れてくださった。
これから文書を発送するが、不採用者は今後のことがあるので、
一刻も早いほうが良いと思い連絡をしている、
という主旨の電話だった。
仕事とはいえ不採用を伝えるのは、気持ちの良いものではないだろう。
しかしこの会社は今後の生徒の就活を考えて、
不採用者優先で連絡をしていたのだ。
その心遣いはとてもありがたかった。

ほぼ毎年お世話になっているが、珍しく不採用が出たB社は、
担当者が説明に来てくださった。
この企業は面接、筆記、調査書等の項目ごとに評価をして、
最終的に総合点で採否を決定することを公表している。
担当者の説明によると、面接は最高ランク、その他も合格基準は満たしていた。
しかしある項目が最低評価となったため、
合計するとわずかに合格点には及ばなかったとのことである。
その項目はこちらも気にしていた部分なので結果は納得できた。
担当者はこうも言った。
「面接の様子や働く意欲はとても良かったので、
あの項目さえもう少し評価がつけば内定だったと思う」
生徒本人にはそのまま伝えたが、不採用なのに表情は暗くはなかった。
結果は不採用だったが、面接試験には自信が持てるようになったのだ。
彼が2社目で内定を得たのは言うまでもない。

C社からは次のような連絡があった。
選考の結果、例年の採用基準は満たしているが、
今年は優秀な応募者が多くボーダーラインが上がってしまった。
昨年なら採用できたのに残念である。
採用枠の拡大も検討したができなかった、
という主旨である。
枠の拡大で救われた例も過去にはあったが、企業にはそれぞれの事情がある。
残念だが仕方がない。
本人も悔しがっていたが、その会社に入れるだけの力があると、
証明されたことが大きな力となり次へ進むことができた。

多忙な採用業務の中で不採用者にまで、気を遣うことは難しいかも知れない。
しかし小さな気遣いが生徒、教員、企業の三者それぞれに
プラスの影響をもたらすことは確かである。

【プロフィール】
元都立高校進路指導主任
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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