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【進路コラム】「貴族や富豪でなくても」筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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「良心もあらゆる趣味のやうに、病的なる愛好者を持つてゐる。
さう云ふ愛好者は十中八九、聡明なる貴族か富豪かである」
これは芥川龍之介『侏儒の言葉』に記されている言葉です。
確かに、そうですよね。龍之介の機智、さすがです。

今では、SDGsやLGBTQ、
JICA(独立行政法人国際協力機構)
が行っている開発途上国への国際協力活動、
WWF(世界自然保護基金)が行う、
生物多様性の豊かさの回復・地球温暖化防止活動等など、
とても素晴らしい取り組みが行われるようになりました。
理想社会の実現に向けて、多くの人々が頑張っています。

ところが「人に優しい」「地球に優しい」、
そんな取り組みが行われていることは知っていても、
「それは理想論、まるで絵に描いた餅だ」と、
訳知り顔の大人が「現実的ではない」と言って一刀両断してしまう、
何もしない人がいることも事実です。
これは、芥川が言うところの「良心」に
置き換えても成り立つかもしれません。
ただ、自分の経験の上に立って、
「現実的ではない」と思っているのは、大人たちです。

アドラー心理学では、
「変わりたくても変われない人がたくさんいる」
と問う人に対して、
「変われないでいるのは、自らに対して
『変わらない』という決心を下しているから」
だと答えています。
そして「あなたの不幸はあなたが選んでいるのだ」とも。
つまり、人は自分の経験に基づいた、
それまでの生き方を続けることが楽なのです。
今までの生活を続けると、結果が予想できるので安心するのです。
逆に、しんどいんですよ、変えることは。
だって、何が起きるか予想できないのですから。
つまり、変えることが怖い。だから、変えたくない。
そこで、「現実的でない」と言って逃げてしまうのです。

アドラーが言っているとおり、
「自分で、変わらないという決断をしている人」は、
決して変わりません。
そして、多くの大人たちが、
「変わらない決断」をしてしまっているのです。
 
しかし、幸いにして子供たちは、
大人に比べて多くを知りません。
だからこそ、すんなりとSDGs等の素晴らしい取り組みを
受け入れることができるのです。
つまり、教育が大切ということです。
貴族や富豪でなくても、
誰もが聡明になることができるのだから。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
『ショートショートの宝箱』

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