進路ナビニュース

【進路コラム】「自己PRする人生」筆者・法政大学キャリアデザイン学部教授 児美川孝一郎

高校生のための進路ナビニュース

勤務先の学部では、現在(6月)、
2年生が秋学期から所属することになるゼミ選択の真っ最中である。
学生たちは事前に各ゼミの募集要項を吟味し、
先輩たちから情報を得たりする。
そして、いくつかのゼミを見学したり、説明会に参加したり。
最終的には、志望を絞ったうえで、
特定のゼミに履修希望の書類を提出する。
その後は、面接などを経て、
首尾よく選考をクリアすれば、晴れて希望のゼミに内定する。
履修希望の書類に書かせたり、面接で尋ねたりするのは、
これまでの学業や活動で力を入れてきたこと、
ゼミに入ってやりたいこと、等々。
要するに、学生自身による自己PRだ。
ん、これって、何かに似てないか?

考えてみれば、今どきの若者は、大学入試においても、
AO入試(総合型選抜)や推薦入試(学校推薦型選抜)で
同様のことを経験している。
都道府県によっては、高校入試において、
自己PR書類の提出を求めたり、
面接を実施したりするところもある。
個人的に聞き及んだ範囲ではあるが、
中学校での職場体験の実施において、
希望する体験先の事業所を決めるために、
エントリーシートを書かせる学校もあるという。

一事が万事である。
今どきの若い人たちは、生涯のかなり早い時期から、
何かの節目ごとに何度も何度も、
「自己PR」を求められる人生を送ってきている。
その節目は、入試や就活のような大きなライフイベントもあるが、
今回のゼミ選択のような、自分が何かに応募する、
もっと日常的な出来事もあるだろう。
とはいえ、そうした大小を含めて、
「自己PR」づくめの人生を送るというのは、
どういうことなのか?

「キャリア自律のためには必要」といった声も聞こえてくる。
しかし、こういうことを本当に苦手に感じてしまう若者も
少なくないのだろう、とつい思ってしまう。
支援者は、そんな若者にも積極的に自己をアピールするように
仕向けなくてはいけないのか?
悩ましいところである。

【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。

TOP