【進路コラム】「自己PRする人生」筆者・法政大学キャリアデザイン学部教授 児美川孝一郎 更新日: 2022年7月22日
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勤務先の学部では、現在(6月)、
2年生が秋学期から所属することになるゼミ選択の真っ最中である。
学生たちは事前に各ゼミの募集要項を吟味し、
先輩たちから情報を得たりする。
そして、いくつかのゼミを見学したり、説明会に参加したり。
最終的には、志望を絞ったうえで、
特定のゼミに履修希望の書類を提出する。
その後は、面接などを経て、
首尾よく選考をクリアすれば、晴れて希望のゼミに内定する。
履修希望の書類に書かせたり、面接で尋ねたりするのは、
これまでの学業や活動で力を入れてきたこと、
ゼミに入ってやりたいこと、等々。
要するに、学生自身による自己PRだ。
ん、これって、何かに似てないか?
考えてみれば、今どきの若者は、大学入試においても、
AO入試(総合型選抜)や推薦入試(学校推薦型選抜)で
同様のことを経験している。
都道府県によっては、高校入試において、
自己PR書類の提出を求めたり、
面接を実施したりするところもある。
個人的に聞き及んだ範囲ではあるが、
中学校での職場体験の実施において、
希望する体験先の事業所を決めるために、
エントリーシートを書かせる学校もあるという。
一事が万事である。
今どきの若い人たちは、生涯のかなり早い時期から、
何かの節目ごとに何度も何度も、
「自己PR」を求められる人生を送ってきている。
その節目は、入試や就活のような大きなライフイベントもあるが、
今回のゼミ選択のような、自分が何かに応募する、
もっと日常的な出来事もあるだろう。
とはいえ、そうした大小を含めて、
「自己PR」づくめの人生を送るというのは、
どういうことなのか?
「キャリア自律のためには必要」といった声も聞こえてくる。
しかし、こういうことを本当に苦手に感じてしまう若者も
少なくないのだろう、とつい思ってしまう。
支援者は、そんな若者にも積極的に自己をアピールするように
仕向けなくてはいけないのか?
悩ましいところである。
【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。