「遊んでから我慢する人じゃなくて」 筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央 更新日: 2022年7月1日
高校生のための進路ナビニュース
「遊んでから我慢する人じゃなくて、
我慢してから遊ぶ人になりなさい」
これは、吉田修一『犯罪小説集』に出てくる言葉です。
感覚的に何となく分かるような気もするのですが、
納得できない感じもします。
というのも、「分かる気がする」のは
「我慢して頑張ったら、良い結果が訪れる」という、
とても良い話だから。いわゆる正論ですね。
逆に「納得できない」部分は、
この言葉を言い換えると「アリとキリギリス」になるから。
でも、キリギリスは遊んだ後に死んでしまうし、
アリは我慢した後も遊ぶことなく働き続けているんだもの。
それって、どうなの? と思ってしまいます。
この言葉では、
「我慢と遊びが2つセット」で捉えられているのですが、
実際は「我慢と遊びがセット」になっていないことが多いのです。
まさに、『はたらけどはたらけど、なおわが生活……』です。
どんなに働いても報われないなら、
「若いうちからキリギリスになったほうがいい」
「楽しいまま人生を終わるのが幸せだ」
と思ってしまう人がいるのにも、
つい「うーん」と思ってしまいます。
ところで、この言葉の中で「我慢と遊び」は、
まるで「水と油」のように相容れないものとして
捉えられていますが、本当にそうでしょうか。
ここで言う我慢とは仕事のことです。
ですが、「仕事をすることが楽しい」
というイコールの関係になればどうでしょう。
きっと、とても楽しい人生になると思います。
近頃はシンギュラリティ問題が叫ばれ、
将来的には「現在の仕事の半分以上がなくなる」と言われています。
昭和の時代とは異なり、今だって
「ベルトコンベアーに追われながら、一日中ハンダ付けをする」
なんて仕事、人間はしていません。
でも、これからは、
「我慢してしなければならない、単純でつまらない仕事」なんて、
人間はしなくてよくなるのです。
だって、そんな仕事は全部ロボットに任せておけばいいのだから。
近い将来には、
「自分が楽しいと思えることをしていけば、それが仕事になる」
「遊び=仕事」、そんな時代がやってきます。
ただし、自分が楽しいと思うことを仕事として成立させるためには、
それなりの力・能力をつけておく必要があります。
ということは、今の時代だからこそ
「我慢して勉強し、
それからの人生において仕事で遊ぶ人になりなさい」
でなければならないのです。
だから、頑張れ学生・生徒たち。
先生方は、そんな「頑張る学生・生徒の皆さん」を応援しています。
【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
『ショートショートの宝箱』