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「遊んでから我慢する人じゃなくて」 筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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「遊んでから我慢する人じゃなくて、
我慢してから遊ぶ人になりなさい」
これは、吉田修一『犯罪小説集』に出てくる言葉です。
感覚的に何となく分かるような気もするのですが、
納得できない感じもします。
というのも、「分かる気がする」のは
「我慢して頑張ったら、良い結果が訪れる」という、
とても良い話だから。いわゆる正論ですね。
逆に「納得できない」部分は、
この言葉を言い換えると「アリとキリギリス」になるから。
でも、キリギリスは遊んだ後に死んでしまうし、
アリは我慢した後も遊ぶことなく働き続けているんだもの。
それって、どうなの? と思ってしまいます。

この言葉では、
「我慢と遊びが2つセット」で捉えられているのですが、
実際は「我慢と遊びがセット」になっていないことが多いのです。
まさに、『はたらけどはたらけど、なおわが生活……』です。
どんなに働いても報われないなら、
「若いうちからキリギリスになったほうがいい」
「楽しいまま人生を終わるのが幸せだ」
と思ってしまう人がいるのにも、
つい「うーん」と思ってしまいます。

ところで、この言葉の中で「我慢と遊び」は、
まるで「水と油」のように相容れないものとして
捉えられていますが、本当にそうでしょうか。
ここで言う我慢とは仕事のことです。
ですが、「仕事をすることが楽しい」
というイコールの関係になればどうでしょう。
きっと、とても楽しい人生になると思います。

近頃はシンギュラリティ問題が叫ばれ、
将来的には「現在の仕事の半分以上がなくなる」と言われています。
昭和の時代とは異なり、今だって
「ベルトコンベアーに追われながら、一日中ハンダ付けをする」
なんて仕事、人間はしていません。
でも、これからは、
「我慢してしなければならない、単純でつまらない仕事」なんて、
人間はしなくてよくなるのです。
だって、そんな仕事は全部ロボットに任せておけばいいのだから。
近い将来には、
「自分が楽しいと思えることをしていけば、それが仕事になる」
「遊び=仕事」、そんな時代がやってきます。

ただし、自分が楽しいと思うことを仕事として成立させるためには、
それなりの力・能力をつけておく必要があります。
ということは、今の時代だからこそ
「我慢して勉強し、
それからの人生において仕事で遊ぶ人になりなさい」
でなければならないのです。
だから、頑張れ学生・生徒たち。
先生方は、そんな「頑張る学生・生徒の皆さん」を応援しています。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
『ショートショートの宝箱』

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