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【進路コラム】「こだわり」 筆者・大阪国際中学校高等学校 橋本光央

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こだわりの逸品、こだわりが強い人など、
「こだわり」というと何となく、
「強い意志で事に臨む」という感じがします。
どうやら良い意味で使われているようです。
ところで、「こだわり」とは、本来どういう意味なのか、
ご存知ですか。
確認のため、辞書で調べてみました。
すると、「少し」という意味の接頭語「こ」に、
「障る:(意味)害になる」が合わさってできた
「こざわり」から変化した言葉だそうです。
つまり「少し害になる」が本来の意味だったのです。

ためしに「こだわり」を言い換えてみると、
「拘泥:(意味)一つの事を必要以上に気にすること」
「固執:(意味)自分の考えを押し通そうとすること」
「意固地:(意味) 意地を張ってつまらないことに頑ななこと」
「執着:(仏教用語)ある特定の物事に囚われてしまうこと」
等となり、確かにあまり良い意味とは言えません。

このことは、英語で考えてみると分かり易いと思います。
例えば、「食にこだわる人」と言うと
日本人なら良いイメージに感じますが、
英訳すると「He is very particular about food.」となり、
「食べ物に対して口うるさい人」というニュアンスになってしまいます。
おそらく、今「こだわり」をプラスイメージで用いている人は、
「他人の意見は置いておくとして、自分にとって価値あること」
という意味で使っているのでしょう。
とすると「食にこだわる」は
「食べることをとても大切にする」という意味なので、
「He values eating very much.」となります。
これなら、外国の方にも好意的に受け取ってもらえるに違いありません。

言葉は生き物です。
時代によって意味・使われ方が変わっていくのは、
仕方のないことかもしれません。
今では、若者は「やばい」を「最高に良い」という意味で使っていますし、
若者に限らず「真逆(まぎゃく)」なんて言葉は日常的に使われています。
でも、昔の日本語には「まぎゃく」という言い方はなく、
「正反対」と言っていたし、
「真逆」と書くと「まさか」と読んでいましたから。

しかし、自分を中心とした狭いサークル内だけでしか通じない言葉では、
そのサークルの外にコミュニケ-ションは広がりません。
それどころか、意味のとらえ方が違う言葉を使うと誤解が生じ、
それが不信感につながったりもしてしまいますから。
今は国際化・インターナショナリゼーションが謳われている時代です。
そして、言葉はコミュニケーションツールです。
意見・考え方が異なる人たちが、
互いにきちんと理解し合いコミュニケーションを広げるためには、
言葉は、やはり正しい意味で用いなければならないと思います。
もしかすると「言葉を大切にしなければ」という私自身が、
「言葉にこだわって」いるのかもしれませんが。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
日本SF作家クラブ公式ホームページにて
天野大空として提供した2行ショートショート3作が掲載されました。
「江坂遊とその仲間たちの二行ショートショートを読み解く」江坂遊

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