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【進路コラム】「SNS時代の進路探索」 筆者・法政大学キャリアデザイン学部 教授 児美川孝一郎

高校生のための進路ナビニュース

先日、GIGAスクールと教育DXをテーマとする学習会において、
講演をさせていただく機会を得た。
会を主催したのは、教育関係の研究所であり、
内容から考えても、参加者の圧倒的多数は教師であった。

ところが、会の終了後、出口に向かう途中、
どう見ても10代であろうという女性に話しかけられた。
聞けば、高校3年生だという。
筆者が所属する学部を志望しているらしい。
そこで、大学や学部の話を少しした後で、
思いきって、どうやって
この学習会のことを知ったのかを尋ねてみた。
すると、「児美川先生のtwitterをフォローしているので」
と返された。

正直、虚を突かれた。
若い世代がtwitterやInstagramを
情報収集の手段として利用しているのは、頭ではわかっていた。
でも、それが、こういう機会を生むのだという
実感がなかったからである。
僕自身が、この手の学習会のことをSNSで発信する時に
念頭においていたのは、せいぜい大学生までだった。
教育を学んでいたり、教職課程を履修したりしている学生が
来てくれたらいいな、くらいの旧来型の発想である。
しかし、そんな発信者側の思惑なんてはるかに通り越して、
目の前には自分の進路探索のために参加してみようという
意欲と行動力に溢れる高校生がいたわけである。

そういう時代になったのだな、とつくづく思った。
ちなみに、恐る恐るではあったが、
学習会についての感想も聞いてみた。
すると、即座に
「先生たちの職員室に潜り込んだみたいで、
すごく面白かったです」
という答えが返ってきた。
これまた、そういう時代になったのだ。
大人と子どもの間で情報が遮断されたりはしない。
誰もが、どんな情報にもアクセスできる。

今どきの若い世代は、こういう時代に自らの進路探索をし、
選択や意思決定をしているのだということの意味を、
もっと理論的にも掘り下げてみなければいけないと
痛感させられた。

【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。

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